931: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/04/06(木) 05:49:49.73 ID:GGWjuIRv0
VRによりEVEの内部に侵入するエクスの目に映るのは、暗闇の中を光の粒子が飛び交っていて、身体がその中を浮遊した状態で高速移動している感覚。目的地に転送(いく)最中のこれは、いつまでたっても慣れない。
吐き気をこらえて、しばらく進んでいくと、目的のAIをつかさどる部分にたどり着いた。すでに解析済みの情報を思考(にゅうりょく)して、中に入る。
「…ウソ、だろ?」
目の前に広がるのは、それこそ現実と同じ草原、青空、太陽が揃っている。穏やかな風が吹き、草が海面のように波うつ。風邪が頬を撫でるのも、太陽の穏やかな暖かささえも感じられる。
現実と同じように作られたVR空間は確かに存在する。映画撮影用に、リアルな空間を作り俳優達がその中で演技をする。アクション映画などで用いられている手法だ。それでも、その空間が現実と同じ肌触りを持つことはない。
「コホン、ようやっとここにきた訳だな」
振り返る初老ぐらいの男性がそこに立っていた。品の良いスーツを纏い、カフスなどもこだわった物を身に着けているように見え、そしてとある人物との面影が重なる。
「EVEのAIを分析しようとすることは予想の範囲内ではあるからな。折角だからVR空間を用意してみた」
「あんたは…、山海沙維…」
正しくはないなと、首を振る。エクスが資料を目を通した山海そのままだったのに違うということは。
「私自身は、その山海をモデルとし、EVEとは別に用意したAI。で、君なら十分な説明になるだろう、エクス君」
そしてそのAIは、どういう訳かエクスのことを認識していた。
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