3:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 16:47:58.74 ID:H76pZlH60
  コーヒーを淹れていると事務所のドアが勢いよく開いた。 
  
 「おはようございまーす」 
  
  給湯室にいるので顔は見えないが、声から察するに奈緒のようだ。 
4:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 16:49:54.83 ID:H76pZlH60
 「いや。わからないな」 
 「へ?」 
  
  俺の予想外の返答に、奈緒は大きな目をぱちくりさせた。 
   
5:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 16:52:39.23 ID:H76pZlH60
 「あきれた」 
  
  事務所を飛び出していった奈緒を止めることもできず、 
  呆然と立ち尽くしている俺に、非難の声がかけられた。振り返ると、凛と加蓮が立っていた。 
   
6:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 16:53:26.39 ID:H76pZlH60
  俺はポケットに手を入れ、感触を確かめた。 
   
  悲しいことに、一週間前から練習していた「誕生日おめでとう」の言葉も、 
  朝一で渡すはずだったプレゼントも、俺の内側にしっかりと残っている。 
  
7:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 16:55:04.17 ID:H76pZlH60
 「……プロデューサー、もういい大人だよね」 
  
  尖っていた目を白くさせ、凛はため息をついた。 
  
 「俺だって渡そうとしたんだ。でもいざ、奈緒を前にしたら言葉が出なくて」 
8:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 16:56:46.73 ID:H76pZlH60
 「プロデューサーと奈緒って似ているよね」 
  
  笑いがやっと収まったのか、優しい口調で、加蓮が俺と凛の会話に混ざってくる。 
  
 「可愛いところがか?」 
9:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 16:58:32.98 ID:H76pZlH60
  確かに。言われてみると、凛にしろ、加蓮にしろ、奈緒にしろ、 
  冗談は言い合える仲なのに、あまり褒めたり、感謝したりすることはなかったな。 
   
  でも俺はダメプロデューサーだ。 
  
10:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 17:00:46.04 ID:H76pZlH60
 「でもね。親しいから言わなくてもわかってくれてると思って、言わないのはダメだと思うな。 
  ちゃんと言葉にして伝えないと。言われた側はすごく嬉しいんだから」 
  
 「トライアドの初ライブの後。 
  奈緒が凛と私に「凛と加蓮と組めて本当によかった。二人とも無二の親友だ。これからもよろしくな」 
11:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 17:01:47.66 ID:H76pZlH60
 「本当は私や凛も他の子も、プロデューサーから褒められたりしたいけど、 
  今日は奈緒の誕生日だし、奈緒が最初でいいよ。 
  だからね、プロデューサー。恥ずかしいかもしれないけど、頑張って」 
  
  
12:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 17:02:55.37 ID:H76pZlH60
  気づけば9月も中頃だ。 
  あれだけ夏を騒がせた蝉も、刺すような陽射しもいない。 
  半袖が気持ちいい。素晴らしい秋日和だ。 
  
  
13:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 17:05:02.55 ID:H76pZlH60
 「俺が悪かったよ」 
 「別にプロデューサーさんは悪くないよ?今日がなんの日か答えられなかっただけじゃん。 
  それだけで悪い人になるなら、あたしだって明日から悪い人じゃん」 
  
  俺の謝罪に対し、奈緒はそっぽをむいて、べそをかいている。 
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