20:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:08:26.64 ID:Sa18P+fH0
 ◇ 
  
  右往左往していた俺たちが一番最初にやりだしたのが、ネットの顔出しラジオだった。 
  顔出しラジオって、それってラジオなのか? まぁともかく、アイドルとして顔出ししていくのにも、一番ハードルが低いかと思ったのだ。 
  
21:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:09:10.50 ID:Sa18P+fH0
  
 「あそこは……ふ、二人の、愛の巣……だね……」 
  
 「時々思うけれど、小梅ちゃん俺のこと好きすぎない?」 
  
22:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:10:17.08 ID:Sa18P+fH0
  
  人気アイドルの仲間入りをしても、他のアイドルが頻繁に遊びに来ることなども相まって小梅ちゃんには欠かせない番組になっていた。 
  時々起こる怪現象も素敵なスパイスになって、しっかりオカルトファンも掴むことができた。 
  
  今でも収録中にポルターガイストが起こるのは日常茶飯事だ。 
23:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:10:51.90 ID:Sa18P+fH0
 ◇ 
  
  小梅ちゃんに連れられて、俺は今収録ブースの前にいる。 
  
 「それで、困ったことって?」 
24:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:11:44.84 ID:Sa18P+fH0
  
  往々にして幽霊さんは、自分のことのわかる小梅ちゃんにだけ用がある。 
  それ以外の人に関わるときはイタズラが殆どで、俺に用があるなんて幽霊さんは初めてだった。 
  
  当然、俺は幽霊さんを見ることができないし、触れることもできない。 
25:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:12:15.06 ID:Sa18P+fH0
   
  ところがどっこい、俺に用があるときたもんだ。俺の知り合いなのか?  
  なんの恨みか。祟られるのか。 
  
 「……大丈夫な人?」 
26:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:12:43.31 ID:Sa18P+fH0
   
  
  ドアを開けた瞬間俺の目に映ったのは、ふわふわ浮かぶ一升瓶だった。 
  
  
27:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:13:19.46 ID:Sa18P+fH0
  
  あぁ、これは小梅ちゃんが困る訳だ。俺だって困る。 
  どこから持ってきたのだろうと思ったが、一升瓶くらいなら事務所にはいくらでも転がっている。それで良いのかこの事務所。 
  
  机に置かれたコップには、残り少しではあるけれど透明な液体。見たことのあるラベル。 
28:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:14:17.39 ID:Sa18P+fH0
  
  俺がブースに入った瞬間、ふわふわ浮かぶ一升瓶が傾いて、机のコップに注がれる。 
  今度はコップが浮き上がり、安焼酎が揺れて、減ってゆく。 
  
  どこに消えていくんだろう。 
29:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:14:54.12 ID:Sa18P+fH0
  
  なんなのだこの一升瓶のオバケは。 
  
  ニマニマ笑うように揺れている。なにの返事もないし、信楽焼きの狸に話しかけているみたいだ。 
  俺に幽霊さんの声は聞こえないから、当然なのだけれど。 
30:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 22:15:28.82 ID:Sa18P+fH0
  
  嘘だろう。コップの中の焼酎は空になっていた。 
  
 「あと……スーツ、似合ってないな……だって……」 
  
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