53:名無しNIPPER
2016/12/02(金) 17:01:46.14 ID:eCIbGQaN0
 かさり、と近くで何かが動く音。 
 目を向けると体に宝石の埋まった、綺麗なトカゲのような生き物。 
 私に気付いてかは分かりませんが、どこかを目指して行きます。 
 せっかくなのでついていくことにしました。 
  
54:名無しNIPPER
2016/12/02(金) 17:02:34.24 ID:eCIbGQaN0
 出来ることならばもっと眺めていたかったのですが、残念ながらここで終わりのようです。 
 私には入れないような、小さな穴倉の中へと入って行きました。 
 あの生き物の巣なのでしょうか。 
  
 そして、その穴のそばには上へと繋がる階段が。 
55:名無しNIPPER
2016/12/10(土) 20:02:23.49 ID:r6vzmOy20
 階段を上って行きます。 
 先程までとは違い鉱石の灯りがありません。 
 僅かに届く光を頼りに見てみると、松明を立てかけるような金具と、そこに刺さった炭。 
 昔はここに、煌々と灯りがともっていたのでしょう。 
  
56:名無しNIPPER
2016/12/10(土) 20:05:19.73 ID:r6vzmOy20
 外から差し込んでくる光。暗がりに慣れた目には眩しいものです。 
  
 あと、少し。あとーーー。 
  
 急に視界が揺らぎます。 
57:名無しNIPPER
2016/12/10(土) 20:06:17.34 ID:r6vzmOy20
 再び夢のなか。モノクロームの世界。 
 森の奥の小屋の前、可愛らしい赤ちゃんを胸に抱いた女性が微笑んでいた。 
  
 雨の降る戦場。どこかの兵隊が、守れなかった街の前に立ち竦む。頬に伝って居るのは涙か雨か。 
 それは彼にしかわからない。 
58:名無しNIPPER
2016/12/10(土) 20:07:16.01 ID:r6vzmOy20
 世界が色付き始める。 
  
 きらびやかな街の灯り。白い雪。青いマフラー。緑のニット帽。赤黒いレンガ。 
  
 また世界が暗くなって遠くなる。 
59:名無しNIPPER[sage]
2016/12/14(水) 20:44:11.75 ID:QAX6bhc20
 乙 
60:名無しNIPPER
2016/12/24(土) 16:45:13.68 ID:NRwNKGCf0
 目を覚ますと街の中にいました。 
 恐らくはベンチだったそれは、所々欠けてはいますがまだ用は成せるみたいです。 
  
 既に枯れ果てた噴水。囲むように並ぶベンチ。手入れがされなくなった木々は各々が望むように伸びて、力強く根を伸ばしています。ここは広場だったのでしょう。 
 建物は既に崩れ蔦に覆われ、恐らく街を明るく彩っていた街灯ももう輝きません。 
61:名無しNIPPER
2016/12/24(土) 17:01:05.12 ID:NRwNKGCf0
 見上げると一面灰色の空。 
 雨が降る・・・程でもなさそうですが、厚ぼったく広がるそれは、太陽の光を遮って世界を暗く濁らせていました。 
  
 足元を眺めると、綺麗に敷き詰められていたはずのレンガは砕けて窪み、気をつけて歩かないと転んでしまいそうです。 
  
62:名無しNIPPER
2016/12/24(土) 17:01:31.32 ID:NRwNKGCf0
 街の外れの方へやってきました。 
 中の方と比べて、より一層寂しい雰囲気を感じるのは。 
 やはり墓地があるからでしょう。 
  
 墓を囲う鉄柵は形こそ保っていますが、錆び付いて。 
63:名無しNIPPER
2016/12/24(土) 17:01:57.62 ID:NRwNKGCf0
 ここの墓地にはどれだけの死者が眠っているのでしょうか。私にはわかりませんが。 
 せめて安らかに眠れるよう、黙祷を捧げていきましょう。 
  
  
 ーーー。 
64:名無しNIPPER[sage]
2016/12/28(水) 05:08:58.79 ID:ex87G4nC0
 乙 
65:名無しNIPPER
2017/01/02(月) 17:42:44.92 ID:eYqwq5Ea0
 街を離れてしばらく歩くと、綺麗な平原にやってきました。  
  いつの間にか空も晴れて、青い空と白い雲、緑色の平原が美しく彩られています。  
    
  そしてその中に小屋が一軒。  
  木造の小綺麗なその建物は、この今まで見た物の中で珍しく風化していませんでした。  
66:名無しNIPPER
2017/01/02(月) 17:50:00.64 ID:eYqwq5Ea0
 きぃ、と音を立てながら扉を開けると香るコーヒーの匂い。 
 カフェだったのでしょうか。並べられたテーブル、カウンター、奥のキッチンには瓶に詰められたコーヒー豆。 
 大きく作られている窓からは、外の景色を良く見ることが出来ます。 
  
 椅子に腰掛け、机に寝そべると微かに感じる木の匂い。 
67:名無しNIPPER
2017/01/02(月) 17:50:35.98 ID:eYqwq5Ea0
 とても優しい空気が流れています。 
 一人でも、孤独を感じさせないような。暖かく包まれているような。 
 まるで時間の流れから切り離されているかのような、とてもゆったりとした気持ちになります。 
  
 やらなくてはいけないこと、急がなくてはいけないもの。 
68:名無しNIPPER
2017/01/02(月) 17:51:08.61 ID:eYqwq5Ea0
 意識がぼんやりとしてきました。 
 大きく息を吸って、吐いて。 
  
 目を瞑ると視界が遮られて、匂いと音が強く感じられて。 
 そして。 
69:名無しNIPPER
2017/01/18(水) 15:37:09.39 ID:OUoPr5qa0
 どこかの町。夕暮れ。 
 子供達が思い思いのところで遊んでる。 
 公園、グラウンド、友達の家。 
 キラキラした笑顔。まだ声変わりしていない、高い声。 
 ずっと続けば良いのに、なんてことも考えずただ遊ぶ。 
70:名無しNIPPER
2017/01/18(水) 15:37:36.63 ID:OUoPr5qa0
 夜。人気のない公園。 
 誰かが1人、ベンチに座って空を眺めてる。 
 時折通りかかる人は皆、早歩きで足元を見つめてた。 
 上には星が出ていて、月も輝いて。その間を縫うように雲がゆっくりと流れてて。 
 ありふれた景色。それをじっと眺めてる。 
71:名無しNIPPER
2017/01/18(水) 15:38:04.66 ID:OUoPr5qa0
 ーーー目を覚ますと、今度は砂浜に横たわっていました。 
  
 サラサラとした、指の隙間から抜けていくような砂。寄せては返す波は、触れるとひんやりとしています。 
 先ほどとは違い、吹き付ける風には強い潮の香り。 
 日が暮れかけた空は、桃色と紫色の絵の具を混ぜたような、微妙な色合いを醸しています。 
72:名無しNIPPER
2017/01/18(水) 15:38:40.81 ID:OUoPr5qa0
 何処となく感傷的になるような。 
 胸がモヤモヤと、霞みがかっているような。 
  
 この海はどこまで広がっているのでしょうか。 
 ただただ弓なりに広がる水平線。 
73:名無しNIPPER
2017/01/18(水) 15:39:15.72 ID:OUoPr5qa0
 どこかふわふわとした気持ちのまま、ぼんやりと砂浜を歩きます。 
 しゃく、しゃく、と砂が沈んでは押されて音を立てて。 
 そうして出来た私の歩いた跡は、波に覆われ隠されていきます。 
 私の前にも、後ろにも道はありません。 
  
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