1:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 20:56:50.39 ID:iQuGjVDwo
【モバマスSS】
ハッピーエンドではないです
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 20:57:45.73 ID:iQuGjVDwo
杏は微睡みから目を覚ました。
見慣れてしまった天井、照明。見回すとこれも見慣れてしまった壁、窓、調度品。
ベッドに寝たままの状態自体には慣れたものだが、場所が自分の家でないとやはり調子は狂う。
しかも、今は怠惰を楽しんでいるわけではない。杏にしては珍しく、不本意ながら寝ているのだ。
3:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 20:58:13.42 ID:iQuGjVDwo
「……そろそろ、だよね」
杏は病室の壁に掛けられた時計を見た。
そろそろ、きらりが来ると約束した時間だ。
4:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 20:58:40.28 ID:iQuGjVDwo
「やほー、杏ちゃん、来たよー」
だから第一声はこうなる。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 20:59:07.53 ID:iQuGjVDwo
「大切にしてるよ?」
真顔で首を傾げるきらりに、杏は絶句。そして、ややあって唸るように呟きながら頷いた。
6:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 20:59:34.57 ID:iQuGjVDwo
肯定されてしまえば、自分はきらりと一緒にいられなくなる。少なくとも、こんなつきあい方は出来なくなる。
そして、きっと、多分、きらりは、肯定を、する。だろうから。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:00:02.74 ID:iQuGjVDwo
二人の名前が出た。
二人の名前しか出ないことを、杏は知っている。
こんな会話の流れになったときに必ず出る二人の名前。
名前の出ない三人目を、杏は知っている。
8:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:00:30.17 ID:iQuGjVDwo
「それにさ」
きらりの笑いを耳に入れていないふりをして、杏は言葉を続ける。
9:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:00:55.99 ID:iQuGjVDwo
「幸子ちゃんよりカワイイよ!」
くふくふときらりは笑う。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:01:22.90 ID:iQuGjVDwo
きらりが杏のお腹に冗談めかして呼びかける。
通常の妊婦よりもずいぶん早く、杏は入院していた。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:01:49.69 ID:iQuGjVDwo
「ねえ、きらり」
「んにゅ?」
12:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:02:16.20 ID:iQuGjVDwo
「だーめ」
くふくふくふ
13:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:02:42.58 ID:iQuGjVDwo
「きらりがいるから」
くふくふくふくふくふ
14:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:03:09.42 ID:iQuGjVDwo
そう、思っていたはずだった。
きらりのことが大好きだった。
信用できる友達だった。
15:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:03:35.86 ID:iQuGjVDwo
だから、そう言える。
きらりに託すことが出来る。
それはもしもの話。
16:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:04:03.01 ID:iQuGjVDwo
抑えなければならないのに、それでも漏れてしまう笑いが聞こえる。
違う。きらりは違う。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:04:29.86 ID:iQuGjVDwo
くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
杏ちゃんの赤ちゃんならきっと可愛いにぃ
18:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:04:57.63 ID:iQuGjVDwo
「やだ」
そう、きらりの声がはっきりと聞こえた。
笑いが止まった。
19:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:05:24.42 ID:iQuGjVDwo
20:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:05:51.60 ID:iQuGjVDwo
きらりは、受付で杏の部屋を確認する。
部屋番号は知っているが、面会の申し込みは必要だ。それに、杏は特別個室にいる。
何しろ元とは言えトップアイドル、普通の病室に入るわけにも行かないだろう。
21:名無しNIPPER[saga]
2016/09/20(火) 21:06:17.96 ID:iQuGjVDwo
「やほー、杏ちゃん、来たよー」
ベッドの上で所在なさげにぼうっとしていた杏が、きらりの姿を認めると言った。
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