過去ログ - 天の原ふりさけ見れば春日なる...
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31: ◆cDyTypz3/.[saga]
2016/10/04(火) 23:06:47.79 ID:NypoJ6GT0
二四〇一。太平洋上。

長良が二隻の駆逐艦と思しき影を14km先にレーダーに捉えたのは日付変更時刻を越えてすぐだった。

五月雨「戦艦ですか?」

長良「ううん、今やっと反応が出てきたところだから、駆逐艦だね」

五月雨「もしかしたら敵の哨戒艦かも「違う」

響「五月雨、あれは味方識別灯じゃないかい?」

五月雨が遠くに微かに見える灯りを斯界に捉えたその時、相手がこちらを認識したのか遠くから警笛が鳴り響いてきた。

五月雨「一体誰が・・・?」

補給艦隊は不安と警戒をかかえながら、その音と光の方へ向かい続ける。

しかしその緊張も十分もすれば氷解した。

空母機動部隊に随伴していた時雨だったのだ。

時雨「皆ッ、どうしようっ、どうすればいい!?」

時雨が叫びながら五月雨の方へ近づく。

その様子に驚きつつも、五月雨が努めて冷静に返す。

五月雨「時雨、大丈夫。潜水艦の脅威ならさっき提督に「違うって言ってるじゃないかッ!」

だがその冷静さが、逆に今の時雨を苛立たせた。

時雨が声を荒らげて五月雨の声を遮る。

あまりの剣幕に何事かと他の皆も時雨を見た。

時雨「白露がッ、白露がぁっ・・・」

怒ったかと思えば、今度は大粒の涙を流し、時雨が必死に訴える。

その腕に抱かれているものがあると気づき、五月雨がそちらへ視線を向ける。


柔軟な発想があっても、執念があっても、機械と人間で決定的に違う点がある。

歯車、要素に対する認識の違い。それが欠けたら、機械は取り替えれば良い。だが、人間は。感情を持つ人間は。

人間は、そうは行かない。



遡上。

残りあと数隻になるまで敵潜水艦を追い込んだのだ。少なくなっても決して気を緩めずに戦い続けたのだ。

なのに、あと一歩及ばず、その瞬間は訪れた。

最後の二隻が発射した魚雷が白露の直下で起爆したのだ。それまでずっと着発信管の魚雷であったから、下を通りすぎる魚雷は全て無視していたから起きてしまった事だった。慢心の余波はここまで続いていたのか。

敵はそれを見越して、最後の数本を磁気信管に切り替えたのだろうか。

爆柱に呑まれる白露を見た時雨は、目の前の光景を信じたくなかった。

その場に立ち尽くし、何が起こったのかをちゃんと理解しようとした。

思考がやっと形を整ってきた頃になってやっとその水柱が消えかかる。

時雨「白露・・・、どこにいるの?」

水柱が消えても白露の姿が見えなかったから、掠れるような声で白露を呼んだ。

返事はない。

時雨「白露、白露!どこにいるんだ、返事してよッ!」

応ずる声はない。

不思議なことに潜水艦が魚雷すら発射してこないが、その事にも時雨は頭が回らない。

時雨「白露っ!」

海面に目を移して、ようやく白露を見つけた。

白露が海面に倒れこんでいるのを見つけた。



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