56:名無しNIPPER[saga]
2016/10/04(火) 20:49:28.04 ID:6BNWGd8K0
そう言って二人で笑ったあと、三葉が愛おしそうに、赤ちゃんの頭を撫でた。
その表情は、穏やかで安らかで……そんな表情の三葉を、俺は見たことがなかった。
……三葉の事は知り尽くしたと思っていた俺だが、まだまだ知らない三葉がいるようだった。
母親としての三葉。
これからしばらく、三葉は赤ちゃんに付きっきりになって、ちょっと寂しくなるかなと思ったが、新しい三葉を発見出来るんなら、それもいいだろう。
いや、実際の育児は多分そんな事を思う暇もないくらい大変なんだろうけど……
それでも、俺と三葉なら、必ず乗り越えられる。
そんな気が……いや、違う。俺はもう殆ど確信に近い思いを抱いている。
だって、三葉と俺だ。
そしてその俺たちの子供だ。
大丈夫に決まっていると、その小さな、俺の親指くらいしかない手に触れながらそう思う。
「しかし、出産予定日の10日も前に生まれてきたのに、元気一杯で、健康か……強い子だな……きっと、この子は何でも出来るな」
俺のそんな親ばか発言を聞いて、三葉がまたクスクスと笑う。
「瀧君が言うのなら、そうかもね。……でも、瀧君。甘やかしすぎないでよ?」
「……努力するよ」
政治家的な、曖昧な返答しか出来ない。
それくらい愛おしい。
「……それと、たまには私も甘やかしてよ?」
「……おう。任せろ」
頬を赤くして問うてくる三葉に、俺は出来る限り優しく微笑んでそう言った。
勿論、そっちもぬかりはない。
三葉も赤ちゃんも、一生かけて愛しぬくよ、という思いをこめて、三葉の手を優しく握った。
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