過去ログ - 【ペルソナ5 奥村春SS】春のまにまに
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 21:56:59.08 ID:Y3tzY7X6o
 何か言おうにも頭はついてこれず、口から漏れる言葉は意味を成さない。彼は私の喘ぎとも悲鳴ともつかぬ何かを意に介すことなく、私の左手に掌を重ねた。柔らかな温もりが伝わり、顔が、胸が、心が熱くなる。

 そこで不意に、彼が、ふっと。

「ひゃあぅっ」
以下略



6:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 21:57:47.31 ID:Y3tzY7X6o
 ダメ。無理。抗えない。蕩けちゃいそう。

 経験のなさに起因する想像力の乏しい頭でこの先にありそうな行為を思い浮かべると、体の内側のどこかで疼きにも似た熱を感じた。

 これから、魔性の男のような魅力をもった彼に、知恵の泉のような知識で私のいたるところを、ライオンハートのような大胆さと慈母神のような優しさで、超魔術のような指で、弄ばれる。
以下略



7:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 21:59:03.13 ID:Y3tzY7X6o
「ベッドは駄目だよ。埋まってる」

「……え?」

 彼の言っていることの意味がわからず気の抜けた声が漏れた。
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 21:59:45.16 ID:Y3tzY7X6o
 カメラの横にはスピーカーもついているらしく、弱いノイズとともに私も知っている声が聞こえてきた。

「何をしているー。わたしはちゃんと見ているぞー」

「ふ、双葉ちゃん!?」
以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 22:00:33.53 ID:Y3tzY7X6o
 メイド姿で泣きながら謎の内職をしているのは私の学校の教諭に相違なかった。たぶん見間違いじゃない、はず。

 刹那、窓の外が眩く光り輝いた。

「スクープだねこれは。怪盗くんの浮気現場、押さえたよ!」
以下略



10:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 22:01:29.66 ID:Y3tzY7X6o
「春……。こうなりたくはなかったけど、仕方ないわね」

 マコちゃんはペルソナを出してフレイダインをしようとしているらしい。やめて、それ私に効くから。

「抜け駆けはよくないよ!」
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 22:02:16.96 ID:Y3tzY7X6o


 あ、そうか。

 ここまできてようやく揺るぎないただ一つの簡単な真実に辿り着き、その虚しい答えを呟いた。
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 22:03:10.55 ID:Y3tzY7X6o
「なんだったんだろ。知らない人たくさんいたし……」

 荒唐無稽にもほどがあるよ、わけわかんなすぎ。

 そう思って一人で笑うと、ほんの少しだけど気が紛れた。ちょっと早いけど気持ち悪いからもう着替えちゃおっと。
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 22:03:56.20 ID:Y3tzY7X6o
 本当に途中までは幸せだった……恥ずかしくもあったけれど。夢でさえあれだけ焦るのに、もし実際に彼にあんなことをされてしまったら私はどうなってしまうんだろう。そんな具体性に欠ける妄想をしただけでまた顔に熱がこみ上げるのを感じた。

 まだ彼が地元に帰ってから一週間ちょっとしか経ってないのにあんな夢を見るなんて、どれだけ彼が恋しいんだろう。

 私、彼のことこんなに好きだったんだ。
以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/24(月) 22:04:45.46 ID:Y3tzY7X6o
 恩義。利益。見返り。なんと呼んでもいい。私の家庭環境を知った人たちやお父様の周囲にいた大人たちの行動の数々は、まだ子供だった私の認知を変え固めてしまうには余りあるものだった。

 もっとずっと幼かったときは違っていたはずなのに、いつの間にかそうなっていた。私が大きくなるにつれそれを感じ取れるようになったのか、それとも私以外の人たちが変わっていったのかは今となってはよくわからない。

 けれども成長とともに私の人付き合いの多くは目的ではなくなり、ただの手段になっていった。大過なく物事を終えるための儀式。通過儀礼。人付き合いというものにそれ以上の価値は見出だせない。
以下略



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