過去ログ - 【ペルソナ5 奥村春SS】春のまにまに
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64:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:34:20.75 ID:sIrnBUYZo
 でも怪盗の姿は誰よりもスマートで、どこまでも格好いい憧れのヒーロー。

 さっき「おいで」と言ってくれた姿は、男らしくて優しくて、父のような包容力に溢れていた。

「……君って、ほんと不思議だよね。いろんな顔がある。……どれが君の本当の顔?」
以下略



65:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:35:22.32 ID:sIrnBUYZo
 これまでにも何度か聞かせてもらえた、褒められるよりも嬉しい言葉。何よりも聞きたい言葉。

 聴く度に私はドキッとして胸も頭も熱くなり、なかなか上手く話せなくなるぐらいなんだけれど、今は、違った。

 コーヒーが布に染み渡るように、ミルクが落ちてゆっくりと溶けていくように、私の中に広がっていった。
以下略



66:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:36:20.35 ID:sIrnBUYZo
「あはっ、ちょっと重いかな、私」

 何故か、初めて彼より少し優位に立てた気がする。私の心は完全に奪われちゃってるから、きっと気のせいなんだけど。

「……いや、そんなことない。嬉しいよ」
以下略



67:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:37:06.46 ID:sIrnBUYZo
「知ってる」

「たぶん、君が思ってるよりも、もっとだよ」

「どのくらい?」
以下略



68:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:38:12.06 ID:sIrnBUYZo
「お父様は会社でも従業員の人たちにそんな感じになって、私の人生すらも一人で決めちゃって……、辛かった。苦しかった。それでね、怪盗団にでもなんでも、なんとか昔のお父様に戻ってほしいなって思ってたところでモナちゃんに会って、あなたと、みんなと出会って、やっとちゃんと家族になれるって思ってたら……」

 そこで、喉の奥で感情の塊がつっかえて言葉が出なくなった。彼はそんな私の手を握り、深く頷いた。

 うん。ちゃんと話すよ。
以下略



69:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:39:29.33 ID:sIrnBUYZo
「…………私、独りは嫌だよ。寂しいよ……」

 耐えきれず嗚咽が漏れた。私はまた彼に包まれた。

「俺でよければずっと傍にいる」
以下略



70:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:41:10.27 ID:sIrnBUYZo
「なんて、伝えるの?」

「……いろいろ、かな」

 胸がしめつけられるような恋をして、心から好きな人ができました、とか。
以下略



71:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:41:54.47 ID:sIrnBUYZo
 やっぱり恥ずかしい。こんなのどう聞いてもプロポーズと変わらないじゃない。私と家族になってくださいって……。

「……大胆だな」

「それぐらい、好きなんだよ。伝わった?」
以下略



72:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:42:41.62 ID:sIrnBUYZo
「もっと? それとも子供はいらない?」

「い、いや、そんなことは……。私も三人ぐらいがいいかなぁって……一姫二太郎って言うでしょう?」

「わかった」
以下略



73:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:43:36.42 ID:sIrnBUYZo


 動くものを感じて目を醒ますと、最愛の人の顔がすぐ横にあった。彼の腕を枕にしていたことを思い出して頬が緩んだ。

 こんな幸せ、あるんだね。
以下略



74:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/29(土) 23:44:46.15 ID:sIrnBUYZo
「…………かわいい」

 眼鏡をかけていない、普段と違う姿の彼に引き寄せられるように頬にキスをした。

 口づけした唇に指をあてて部屋を見回してみたけど、時計のようなものが見当たらない。仕方なく鞄の中に入れてあったスマートフォンを取り出してデジタル表示の時刻を確認する。
以下略



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