過去ログ - アイドルになったら
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/12/29(木) 01:38:49.96 ID:HEjs1iXg0
子供のころ、何でアイドルになりたかったのかなんて思い出せない。

「可愛い衣装を着て歌って踊りたい」とか、「ちやほやされてみたい」とか、そんなのだったような、違うような。

閃くような答えは見つからないんだけど、今、アイドルをしている理由は分かる。惰性。

ファンに喜んでもらいたい気持ちがないわけじゃない。できる限り笑顔になってもらえるよう、歌も踊りも頑張るし、ファンサービスにだって応える。

それでも、いつからかドキドキを感じなくなってしまった。

初めてステージに立った時の高揚感、テレビに映った時の緊張、そういうのを全部忘れちゃった。

今日だって、これからステージに立つというのにそんなことを考えるくらいには。

慣れてしまったといえばそうなのかもしれないけど、このままで良いのかしら、なんて思わないでもない。

中学生の時に始めたアイドル活動も、もう六年目を迎えている。今年で私も成人だ。

友達は大学生活を満喫しているけれど、私は高卒アイドル生活。それも、ものすごく売れているわけではない。

所属しているグループには、大物プロデューサーがついているわけでもなければ、全国的な知名度があるわけでもない。

ローカルアイドル……今は地下アイドルっていう方が正しいのかな。地下アイドルとして、定期的に小さな劇場を借りて公演を行っている。お客さんは多くて200人くらいかな。

決してマイナーではないけれど、超有名でもない。全国レベルの歌番組にはたまに出られるかどうか。そんな感じのグループだ。

将来に不安を感じないわけではないけど、だからといって辞めることもできない。

「……そんなこと、考えていても意味ないか」

「えっ?」

言い聞かせるように呟いた言葉は、隣に立っていたハルちんに聞かれていたみたい。

「ううん、何でもない」

「しっかりしてよ、今日はセンター曲も多いんだからさ」

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2:名無しNIPPER
2017/01/04(水) 00:40:35.36 ID:fPRBzJmAO
「分かってる分かってる」

昔は緊張してたのにね。センターじゃなくて、後ろの端の立ち位置でも。

慣れたというべきなのか、飽きてるというべきなのか。
以下略



3:名無しNIPPER
2017/01/11(水) 22:42:43.23 ID:Ikyq7RyJ0
緞帳が上がれば、理由なんて探さずに済む。

目の前にいる人たちに喜んでほしい、笑ってほしい。それだけで、何の疑いもなく歌って踊ることができる。

あの人、今日も来てくれてる。こっちにいる人は初めましてさんだ。
以下略



4:名無しNIPPER
2017/01/11(水) 22:43:26.93 ID:Ikyq7RyJ0
私のサインと握手にどれ程の価値があるのか自分では分からないけど、買ってくれる人たちがいることには感謝の気持ちしかない。一人も来ないと、やっぱりちょっと傷つくだろうし。

うちのグループ、ドールズ自体がそんなに大きくないから、格差って言えるほどの格差もないんだけどね。

ぺろち、ちーちゃんにはファンが多くて、その二人のグッズ列は途切れることはまずない。
以下略



5:名無しNIPPER
2017/01/11(水) 22:44:10.78 ID:Ikyq7RyJ0
「ぺろち、釣るのうまいよねぇ」

「え〜、ぺろはぁ、そんなつもりないんですよぉ。みんな、楽しんでいってくれたら嬉しいな、ってだけでぇ」

わざとらしいくらい甘い声で顔を近づけて対応する彼女は、ファンの間では『釣り師』と言われている。実際、上手い。あんな対応されたら、少なくとも嫌いにはならないだろうなって感じ。
以下略



6:名無しNIPPER
2017/01/11(水) 22:44:41.21 ID:Ikyq7RyJ0
もう写真を見ながらじゃなくても書けるようになったサインのように、私もすらすら言葉が出てくる。

「つのハイさんが来てくれるの嬉しいからそれはそれはでオッケーです!」

「またまたそんなこと言ってー! チョロいオタクだから、あーたん推しになっちゃうじゃんか〜」
以下略



7:名無しNIPPER
2017/01/11(水) 22:45:25.25 ID:Ikyq7RyJ0
「あー、疲れた! 今日も来てた……あのオッサン嫌だった〜」

楽屋で着替えながら、ぺろちは愚痴を漏らし始める。

「汗くさいし、口臭臭いし、オッサン娘と私同い年じゃないの? って感じ」
以下略



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