6:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/31(土) 23:50:53.13 ID:61NievTr0
7:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/31(土) 23:53:16.29 ID:61NievTr0
事務所のドアが、元気さの有り余る挨拶と共に勢いよく開かれた。
声の主は、姿を見るまでもなく誰であるかの判別がついた。
「……おはようございます、茜さん。今日もお元気そうで、何よりです」
8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/31(土) 23:55:33.89 ID:61NievTr0
「……」
「? どうかしましたか、文香ちゃん? あっ、読書中でしたか! これは失礼しました! 私、これからシャワーを浴びてきますから、どうぞごゆっくり――」
「……あの、茜さん」
9:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/31(土) 23:57:32.45 ID:61NievTr0
唐突な頼み事も快く引き受けようとする日野茜のその姿勢には、彼女の持ち味である熱さばかりでなく、どこか気持ちの良い清々しさがあった。
普段ならば、汗の匂いを嗅がせて欲しい、などと口に出してお願いすることなど到底出来ない鷺沢文香も、そんな真っ直ぐさに助けられてか――
目の前の彼女になら、頼める気持ちとなった。
10:名無しNIPPER[sage]
2017/01/01(日) 06:55:49.32 ID:yN2uiLrr0
変態に文章力を与えた結果がこれだよ
11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 12:09:00.93 ID:YiqUyrv20
「茜さんの、匂いを――嗅がせて欲しいのです」
「なるほど、匂いですね!! 分かりました! では早速――はて? 匂い、ですか?」
「はい、匂い、です」
12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 12:13:52.00 ID:YiqUyrv20
「えっと……匂い、といいますと、その……匂いのことでしょうか?」
「はい、鼻腔の嗅覚受容神経によって脳に認識される、匂いのことですが……」
「……?」
13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 12:17:34.96 ID:YiqUyrv20
鷺沢文香にとって一つ誤算であったのは、自分が頼みやすいことと、実際に相手がそれを引き受けてくれるかどうかは、また別の問題であるということだった。
無論、鷺沢文香としても、誰もが手放しで引き受けてくれるような願いではないことは重々承知していたが、しかし、日野茜の気持ち良さにそれを失念させられた形となった。
果たして予想だにしなかった頼まれ事に日野茜の混乱は深まり、彼女はその情報の処理に追われた。
瞳に螺旋の模様を浮かべながらも、飲み込めることだけを、少しずつ飲み込んでいく。
そして数秒後、僅かながらも情報の整理が終わったのだろう日野茜は、恐る恐る口を開いた。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 12:23:20.50 ID:YiqUyrv20
しとろもどろになりながらも、日野茜はしっかりと譲れない点を示しつつ、言葉を紡いだ。
しかしそれは、鷺沢文香にとってもまた、譲れない点であった。
「それでは、駄目なんです」
15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 18:25:45.68 ID:YiqUyrv20
「文香ちゃん……その、理由を聞いても、いいでしょうか……?」
「……はい。私が先程まで読んでいた本に、『爽やかな汗の匂い』という表現が出てきたのです」
「爽やかな汗の匂い、ですか……具体的にどんな匂いかは分かりませんが、でも、イメージすることはできますね」
16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/01(日) 18:27:27.95 ID:YiqUyrv20
「でも、アイドルとなってから、自分の思っていた以上に、自分の知っている世界が狭いことに気付きました。
いえ、それだけでなく、知識として知っていることでさえ、その半分も理解できていなかったことを知りました」
「……文香ちゃん……」
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