15: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:06:27.75 ID:Jsek1YGi0
浜口あやめになって何日たっただろう。
途中から数えるのをやめてしまった。
数えれば、それだけ私が不甲斐なかった日数を数えることになって辛かったから。
16: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:07:10.02 ID:Jsek1YGi0
何度も何度も聞こえてくる声から逃げるように、頭を抱える。
それはできない。
それをしてしまったら、私は本当に何もできない子になってしまう。
17: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:08:15.65 ID:Jsek1YGi0
「これは……」
手の上に落ちた水が何かは知っている。
涙、という悲しかったりすると目から流れる水だ。
18: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:10:33.73 ID:Jsek1YGi0
止めなくては。
早く止めなくては。
早く早く早く。
19: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:11:46.39 ID:Jsek1YGi0
物心つく頃には涙を流さなくなっていた私は、その日今まで泣かなかった分を取り返すかのように涙を流した。
泣いて泣き続けて、トレーナーさんが呆れて私も笑えてくるぐらい泣きながら、ふと思った。
もしも、ここにいるのが私ではなく、本物の浜口あやめだったなら。
20: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:13:31.14 ID:Jsek1YGi0
浜口あやめになってから一年がたった。
里を出てからの一年間は、とても一言ではまとめられない。
涙を流したあの日を皮切りに、今まで忍びとして抑えていた心はゆっくりと確実に私の外へと溢れるようになっていった。
21: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:15:19.57 ID:Jsek1YGi0
久しぶりの里をぐるりとまわる。
忍びの里は、そう簡単には見つからない。
一般人にはわからないように、気を付けて探さなければまず見つかりはしない。
22: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:16:48.96 ID:Jsek1YGi0
きっかけは恐怖だった。
浜口あやめとして数ヶ月たった頃、もしも本物の浜口あやめが戻ってきた時を考えると私は恐ろしくてたまらなくなった。
それほどまでに今の浜口あやめとしての生活が心地よかった。
23: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:19:50.72 ID:Jsek1YGi0
忍者ごっこ好きという設定も、私がやりやすいようにという配慮だろう。
もしくは、私の忍びの技など忍者ごっこにすぎないという意味かもしれない。
今にして思えば、私は里のみんなに褒めてもらいたがって忍びの術を練習していたのはよくなかった。
24: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:20:58.60 ID:Jsek1YGi0
ともかく、今日こうして里を一年ぶりに訪れて、里が消えていることを確認した。
もう私には帰る里はなく、里の忍びでもなくなり、任務も同様になくなった。
今日から私は忍びではない。
25: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/01/04(水) 23:22:18.84 ID:Jsek1YGi0
里のある森から出たところで、プロデューサー殿に今から戻ることを伝えようとスマートフォンを取り出そうとしたら、ポケットにスマホ以外の感触がした。
なんだろう、と取り出してみると。
「ふふっ」
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