過去ログ - 終わらない物語が嫌いな僕と余命が短い女の子の話
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33: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/08(日) 12:31:50.02 ID:O1Z9DSgO0
「これ、私に・・・?」 
「うん。もしかして新刊持ってた?」と言うと、彼女はぶんぶんと首を横に振り、
「いえ。いつもはおばあちゃんが買ってきてくれてるので。薫さんにもらえて嬉しいです」 
 良かった。彼女がもし持っていたら返品しに行くところだった。
 「こちらこそ、藍野さんに喜んでもらえて嬉しいよ」
以下略



34: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/08(日) 12:37:59.48 ID:O1Z9DSgO0
「うん、わかったよ。芽衣」そう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。
「あら、いつのまにそんな仲良くなってたの?あんた、女の子と友達になれるような子だった?」
 失礼な、と思ったが、よく考えてみれば女の子と二人で遊びにいったことも、付き合ったこともなかった。
確かに、僕にしては珍しいかもしれない。女の子とまったく話せない訳ではないが、どこかで『付き合う』だとか、そういった行為から遠ざかっていた気がした。なぜかはわからないけど、芽衣にはそういったことが浮かばなかった。


35: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/08(日) 12:40:31.17 ID:O1Z9DSgO0
「なんでだろうね。僕にもわかんないや」というと母と芽衣は二人で顔を見合わせて笑っていた。
 談笑もそこそこ、芽衣はどうやら検査があるらしく、看護師さんに呼ばれていた。こちらを悲しそうな目で見ていたため、「待ってるよ」と言うと、「急いで行ってきます!」と駆けて行った。
「芽衣ちゃん、あんたの事好きなんじゃない?」
「まさか。母さん以外の話相手ができて嬉しいだけだよ」
 実は僕も少しだけそう思っていたなんてことは口がさけても言えない。きっと彼女は人とふれあう機会が少ないあまりに、僕の事を良い友人的な意味で好きなだけだ。僕としても、(一応)女子高校生である彼女を恋愛対象でみることは避けたかった。  


36: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/08(日) 12:43:40.38 ID:O1Z9DSgO0
「・・・芽衣ちゃんの余命のことは前にもいったよね」
 少し間をおいて「うん」と返事をした。
 「芽衣ちゃん、今度お家に帰れるんだって」
 「そうなんだ」と言いながら僕は彼女のことを思い出した。彼女はたしか、両親と仲が良くないんじゃなかったか。
 「ご両親と仲が悪いらしくてね、おばあちゃんに面倒みてもらってるんですって。でもおばあちゃんは遠くに住んでいて頻繁には会えないらしいの」
以下略



37: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/08(日) 12:51:43.40 ID:O1Z9DSgO0
「うちで預かるってこと?」
「うん。まだ芽衣ちゃんには言ってないけど。あの子、一時帰宅できるって聞いたときにどうしようって言ってたから。お父さんには伝えてあるし、薫が良ければなんだけど・・・」
「大丈夫だよ。でも男二人のなかに女の子って・・・」
 母は「そうよねぇ」とつぶやき、うーんとうなっていた。
 するとドアが開いて、彼女が帰ってきた


38: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/08(日) 13:09:22.17 ID:O1Z9DSgO0
「ただいま、です」
「おかえりなさい」
 彼女はとてとてとこちらに駆け寄ってきた。僕はあの話を持ち出した。
 芽衣」彼女に向き合って読んだ。
「はい」と空気を察したのか、神妙そうな面持ちをして、ビシッと姿勢をただした。
以下略



39: ◆eZMycVsOYY[sage saga]
2017/01/08(日) 13:12:43.48 ID:O1Z9DSgO0
やっぱり嫌だよね、ごめん」と言おうと口を開きかけると
「いいんですか・・・?行きたい、行きたいです!」こちらに身を乗り出しながら言った。僕はほっと息をついて母と目を合わせた。
「私は帰れないから、男二人の中だけど頑張ってね」
 「はいっ」
 そうして二週間後、二泊三日で彼女は僕の家に来る事になった。
以下略



40: ◆eZMycVsOYY[saga]
2017/01/08(日) 13:16:41.47 ID:O1Z9DSgO0
彼女が我が家にやってくる前日には、僕も父も大慌てで準備した。僕は大学の宿題があったし、父も仕事で忙しかった。だからすっかり忘れていたのだ。そうしてリビングを片っ端から片付けて、便器の掃除をして、食べ物はどんなものが良いかなどをネットで検索しながら買い出しに行き、なんとか、彼女を迎えられる状態になった。
 彼女を迎えに行くために病院へ向かった。ドアを開けると可愛らしい服を着た彼女と母がいた
 彼女は少し恥ずかしそうな様子だったが、僕と目が合うと、「よろしくお願いします」と言った。
「せっかくだから、街にでも言ってきたら?お小遣いあげるし、女の子なんだからウィンドウショッピングでも楽しいと思うよ」
 僕は彼女の方を見て、「芽衣が行きたいなら」と伝えた。
以下略



41: ◆eZMycVsOYY[saga]
2017/01/08(日) 13:24:40.63 ID:O1Z9DSgO0
 それから僕と芽衣は二人で街へ出かけた。街といっても大都会というわけでもないし、平日だったのもあり、人はそう多くなかった。歩きながら、
「服、可愛いね。いつも病院服だったからびっくりした」と言った。彼女は少し顔を赤くさせて、
「あ、ありがとうございます。えっとおばあちゃんが買ってくれて・・・」と教えてくれた。
 女の子と二人で出かけた事のない僕は、どこへ行けばいいのかわからず、
「行きたい場所とか、ある?」と聞いた。すると、
以下略



42:名無しNIPPER[sage]
2017/01/08(日) 13:48:45.00 ID:FSmutK/80
ウルウル


43: ◆eZMycVsOYY[saga]
2017/01/08(日) 14:25:45.05 ID:O1Z9DSgO0
 いつも病院にいるとはいえ、やはり女の子なんだろう。店を通る度に「ここ見ても良いですか」と聞いてきた。僕は実家暮らしだし、バイトもそれなりにしてるからお金はあった。そう多くはないけれども、「何か買ってあげるよ」と彼女に言うと、真っ青な顔で首を横に振ったので、以後言わないようにした。
 ふらっと寄った雑貨屋で、彼女がクマのキーホルダーを見つめていた。どうやら色の種類が多いらしい。彼女を見ていると、
「薫さん、あの、色違いで一緒に買いませんか」とおずおずと僕に言った。彼女は今まで見たお店の中で何かを買う事はなかったから、よほどそれが気に入ったのだろう。
「僕とお揃いでいいの?」
「薫さんとがいいんです」と力説された。それじゃあ、といって僕は男が持っていても目立たなさそうな青いクマを、彼女は可愛らしい桜色のクマを持ってレジへ並んだ
以下略



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