過去ログ - あなたの物語を。トエル 『氷菓』
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51: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:48:22.15 ID:fiJYedV+0
「ところで千反田」

 俺はそんな不安を振り払おうと隣を歩く千反田に声を掛ける。

「父親が、お前に『家のことは気にせず自由に生きろ』となぜその日に語ったのか、
以下略



52: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:49:11.87 ID:fiJYedV+0
「別にどんな些細なことだっていいんだぞ。

それに、普段から一緒に生活をするお前でなければ些細な変化なんて気づきようもない」

 腕を組み合わせ、下唇を噛んでもう一度記憶を手繰り始めた千反田が
以下略



53: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:49:56.18 ID:fiJYedV+0
 時折このお嬢様は俺が期待する加減というものを、

ものの見事にあっさりと裏切ってくれる。

「どうでしょうか? うーん、あっ! では物置の整理をしていて、
以下略



54: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:50:31.37 ID:fiJYedV+0
 ひょっとすれば、千反田が望むような答えはないのかもしれない。

父親が以前よりその思いを内に秘めていたのかどうかも定かではない。

千反田の責を解くという考えを実際に口にしたきっかけ。
以下略



55: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:51:46.83 ID:fiJYedV+0
「える」

 玄関の戸が開き、家の中から一人の女性が姿を表していた。

千反田が俺のさしていた傘の下から飛び出し、小走りに女性の元へとかけて行く。
以下略



56: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:52:27.73 ID:fiJYedV+0
 俺はあえて急ぐようなまねはせず二人のところへ向かった。

玄関まで延びる飛び石の上を、むしろ意識してゆっくりと歩く。


以下略



57: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:53:41.97 ID:fiJYedV+0
「ここで待っていてね。タオルを持ってきますから」

 千反田の母がそう言い、家の奥へと姿を消した。

玄関の三和土には、俺たち二人から時折滴る雨滴により黒い跡が残っている。
以下略



58: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:54:19.61 ID:fiJYedV+0
「あれこの絵、前は置いていなかったよな?」

 取次ぎに設えられた飾り棚の上に、額装された二枚の絵が置かれている。

俺の記憶が正しければ、以前に訪れた際はこの飾り棚には何も置かれてはいなかったはずだ。
以下略



59: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:54:57.43 ID:fiJYedV+0
「ええ、よく覚えていましたね。先程お話した物置の整理のときに見つけたんです。

せっかくですからと飾ることになりました。母はあまり乗り気ではありませんでしたが」

「お前の母親が描いた絵なのか?」
以下略



60: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:56:04.26 ID:fiJYedV+0
向かって左側の絵に描かれているのは、まばらに道を行き交う人々の姿に、

尖塔と教会が佇む街並みの景色だ。じっと細部にまで注意を払うと、

街路にはなにやら落とし物らしき物があったりとなかなか趣向が凝らされている。
以下略



61: ◆KM6w9UgQ1k[saga sage]
2017/01/09(月) 19:56:47.04 ID:fiJYedV+0
「随分と趣が異なる絵画だな。左の方は写実的であるのに対して、

こちらはより柔らかなタッチで抽象的なふうに感じる」

 千反田がじっとこちらの表情を伺っているのが、横目にちらと確認できた。
以下略



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