過去ログ - 伊織「夫婦を越えていけ」
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1:名無しNIPPER
2017/01/20(金) 02:14:30.89 ID:NKOR2HtY0
※レズもの閲覧注意
※いおみき

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2:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:15:28.86 ID:NKOR2HtY0
あなたは今幸せ?
そう問われたとしたら、この私ーー水瀬伊織はこう答えるでしょうね。

「ええ、幸せよ」

以下略



3:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:16:10.50 ID:NKOR2HtY0
電話の内容はやよいが妊娠したとのことであった。
三ヶ月とのことで、弾む声と喋りが、その喜びの大きさを私に教えてくれたわ。
同級生が先に結婚して、しかも子供を授かるというのは、小鳥から「辛い」とは聞いていたが、まさかこれほどのものとは思わなかった。
アイドルを引退して、第二の人生として選んだ社長兼プロデューサーという職はようやくなんとか形になってきたところで、所属アイドルも事務所の予算も、考えるだけで青くなってしまうというほどではない。
むしろやっと実ってきたというべきか、ここ最近は忙しい日々が続いている。
以下略



4:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:16:48.89 ID:NKOR2HtY0
アイドルという形で私は「水瀬」に挑み、私は「水瀬伊織」を証明した。
だから次はお父様やお兄様と同じ土俵で、また「水瀬」に挑んでみたかった。
あいつや律子とは商売敵になってしまったけれども、まぁぼちぼち仲良くやらせてもらってるわ。
24の時に会社を興したから、もう5年目かしら。そこまでずっと走り続けたからか、やよいと違い、私は妊娠どころか結婚さえまだだった。
愛した人の子が、自分のお腹の中にいるってどんな気分なんでしょうね?
以下略



5:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:17:16.74 ID:NKOR2HtY0
多くの人と出会うこの業界、まぁ元アイドルで、この歳になって自分で言うのも何だけれど人よりも綺麗なのでよくそういう意味で声をかけられる。
ロクでもない、馬の骨以下みたいな奴もいる一方で、誠実で真面目、仕事は丁寧だし気配りも上手で、頭も良いみたいな絵に描いたような「良い人」もいる。
しかしいっぺんたりとも、私はそういう人たちとそういう関係になったことがないの。

「その人とキスしてる自分が思いつかない」
以下略



6:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:17:59.92 ID:NKOR2HtY0
しかし、よ。
思いつかないものは思いつかないんだし、そしてそこを妥協するのもなんか違う気がする。
なので、私の返事はいつも決まって「ごめんなさい」であった。
そうして普通の人なら折り合いをつけて生きていくところを生来からのそれで逃し続けて未だに私は独り身なのだ。
お寒い話である。
以下略



7:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:18:42.10 ID:NKOR2HtY0
「ただいまー」

「おかえりなさいなの。今日は遅かったね」

「んーちょっとね。レッスンしてるのを見てきたし」
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:19:10.47 ID:NKOR2HtY0
あの頃の美希を知るものならばみんな驚くことでしょうね。
だってこんなにも家庭的になるなんて、誰も予想していなかったでしょ。
お米の炊き方どころか包丁でものを切るのでさえ、おっかなびっくりだったのに。
今ではお肉は硬くならず、じゃがいもも崩れず。
どこに出しても恥ずかしくない肉じゃがを作れるような立派な女性になるだなんて。
以下略



9:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:19:52.60 ID:NKOR2HtY0
そうやってテーブルからパタパタ準備する後ろ姿を見ていると、私の視線に気づいたのだろうか。美希がこっちを振り返る。

「どーしたの?ミキのこと、じっと見て。もしかしてもしかしてミキに惚れ直しちゃった?」

「そうだ、って言ったらどうするのよ」
以下略



10:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:20:23.97 ID:NKOR2HtY0
あの頃の時を思いだすと今でも少しドキドキしてくる。
私の若さゆえの傲慢さと、信じられないくらい謙虚になった今とのギャップに。
あの頃の私は、この世の全て余すことなく自分は手に入れられると思ってたし、そう信じていた。
トップアイドルの称号だって、前にいる美希を超えて掴み取れると信じてた。
しかし今はどうなのかしら。
以下略



11:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:20:56.00 ID:NKOR2HtY0
そんなことを考えられるくらい大人になってしまったんだなーと改めて感じてしまう。
昔は飲めなかったコーヒーは、今ではあの時飲んでたオレンジジュースの代わりに飲んでいる時がある。
朝起こしてもらうのは変わらないけれども、何もかも人任せじゃなくて、自分である程度して会社に向かう。
着いたら、消したら増える書類に目を通し、とりあえず山を一つずつ減らしていくことに注力する。
間を見計らってあの子達の出てるレッスンなり番組だったり、CDを聞いたりする。
以下略



12:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:21:26.74 ID:NKOR2HtY0
「そういや聞いた?やよいの赤ちゃんの話」

「ええ、本人から直接電話でね」

「やよいに似てすっごく可愛いはずだから産まれたらすぐ観にいこうよ」
以下略



13:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:22:10.99 ID:NKOR2HtY0
食後のゆったりとした時間。雪歩から貰ったお茶をいただきながら、美希が私にこう尋ねてきた。
「伊織はどう?」

「どうって何がよ」

以下略



14:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:22:44.06 ID:NKOR2HtY0
私が自分のそれを察したのはいつだっただろうか。おそらく15歳か、そこらへんだったと思う。
周りの子が、自分の担当プロデューサーに惹かれていってる時に私だけがそうならなかったってのが理由だけども。
別に私が、自分の担当のプロデューサーを嫌いだってことじゃないのよ。
私をアイドルにしてくれた、私のかけがえのないパートナー。
尊敬こそすれど嫌う理由なんてどこにもなかった。
以下略



15:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:23:11.35 ID:NKOR2HtY0
でもね、本当に私にはその人たちと自分がキスしている姿が思いつかなかったの。
その時は別に特になんとも思わなかったのよ。「自分にふさわしい男がいないのが悪い」と恥ずかしげもなく思っていた。
ハッキリと自覚したのは19歳。
アイドルを引退して訪れた、外国で。
そこには男性同士、女性同士、もちろん男女の恋人同士が自然に手を繋ぎ、愛を語りあっていた。
以下略



16:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:23:37.70 ID:NKOR2HtY0
だからといってショックではなかった。
むしろスッキリした気分だった。
そして明確に女性が恋愛対象だと自覚したからって、私は何も変わらなかった。
765プロのみんなは素敵な人たちばかりだったけれども、それでも私にとっては良き仲間のままであったし、これからもそうだと信じていた。
でもね、たった一人だけ変わってしまったのがいるの。あいつのことだけどね?
以下略



17:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:24:03.55 ID:NKOR2HtY0
そこから美希が何を思ったのか、考えたのかは分からない。
ただ自然と美希は私の旅行に着いてきて、帰国してからも私と暮らしだした。
それが何を思ってのことかは、私には分からなかった。
でもね、美希との旅行は楽しかったわ。
アイドルにいた頃と変わってない顔だったり、変わった顔だったり、はじめて見る顔にたくさん見られて。
以下略



18:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:24:38.07 ID:NKOR2HtY0
もし聞いてしまってこの関係が終わってしまうのかと思うと、怖くてできなかった。
そして聞けないまま、こんなに経ってしまった。
検討はついている、たぶんプロデューサーのことなのだろうと。
私を見るときのあいつの目は、私を通して誰か別の人を見ている時がある。
プロデューサーと使うはずだった時間を私に使っているのだろうと。
以下略



19:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:25:08.43 ID:NKOR2HtY0
「私がどうしたいか、ね」

「そっ。伊織がどうしたいか。どうなりたいかって言いかえてもいいかも」

「あんたからそんな哲学的な言葉が聞けるとは思わなかったわ」
以下略



20:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:26:09.88 ID:NKOR2HtY0

「会社があって、仕事があって、あの子たちがいて、……そしてね、この暮らしがずっと続けばいいと思ってるわ。何も変わらなくていい。悪くなるのは嫌だけど、そんなに良くならなくてもいい」

永遠の停滞、それこそが私の望みだった。
朝起きて、美希が作ってくれた朝食を食べて、事務所に着いて、仕事して、美希が作ってくれたお弁当食べて、あの子たちのレッスンをちょっと覗いて。
以下略



21:名無しNIPPER[sage]
2017/01/20(金) 02:26:59.93 ID:NKOR2HtY0
「美希がいても、いいの?」

「あんたがいないと、はじまらないわよ」

これが私の精一杯。
以下略



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