過去ログ - 未来人「少し先の未来で、待ってるから」
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35: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/04(土) 22:35:13.44 ID:VUzEAQad0
 アパートの近くまで来ると、少し車の音が聞こえてくるようになった。

 近くに大きい道路なんてないはず。どこかの家族が外出していたのかもしれない。

「この奥だね」

 山田は少し震えているようだった。

 私は黙って山田の手を握った。山田も握り返してきた。
 ……実は私も、少し怖い。

 自然と忍足になってしまって、初めとは比べ物にならないほどゆっくりと進みながら、そこの角を曲がればアパート、と言うところまで来た。

 どこからか虫の鳴き声が聞こえる。

 耳をすませると、少し、何かの足音がした気がして、心臓が大きく跳ねた。
 3人で顔を見合わせる。

 焦げ紫は見えない。でも、もしかしたら。

「……行くよ」

 中村も声が震えていた。

 3人で息を飲み、角からそぅっと顔を覗かせた。
 その時だった。

「何してるんだ?」

 私たちの真後ろから、突然低い声がした。

 腰が抜けそうなほど驚いて、3人でほぼ同時に振り返ると、
 急に眩しい光が当てられて、目を細めた。

「……小学生か? こんな夜中に何してる?」

 私は固まってしまった。頭が真っ白になって、突然ふわふわとした気分になる。

 山田と私の手を、何かが思いっきり引っ張った。
 中村だった。

「警察だ、逃げるぞ! 小野、松田!」

 はっと我に返った山田と私は、弾き出されたようにそこから走り出した。


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