過去ログ - 未来人「少し先の未来で、待ってるから」
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42: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/04(土) 22:45:35.05 ID:VUzEAQad0

 少し湿った、気持ちの悪い足音が近づく。

 一歩。

 また一歩。

 まだだ。

 山田は少し泣き声を漏らしていた。中村が隣で歯をくいしばる気配がした。
 私も涙で視界がぼやけていた。

 一歩。

 また一歩、と足音がしたところで、明らかに匂いが少し濃くなった。

 つまり、化け物との間に、隔たりがなくなった証拠。

「走って!」

 と言い終わるより早く、私たちは駆け出した。ほんの100メートルもないような道が、そのときはどの道よりも長く感じた。

 とにかく走る。走る。

 山田が擦りむいた足で、必死に私の肩を支えてくれている。
 中村も私たちに合わせながら、1人で逃げたい気持ちを抑えてくれている。

 私も痛む身体に鞭を打って、全力で走った。

 曲がり角の直前、駄菓子屋が見える位置で、私たちは走るのをやめた。
 少しよろけながら、ぜえぜえと息を吐く。

「ばけ、化け物は、付いてきてる?」

 隣の中村が振り返ろうとしたのを、私は頭突きで止めた。
 中村は「いてっ」と小さく悲鳴をあげたあと、すぐに顔を前に向けて、「ごめん」と息を漏らした。
 私も「ごめん」と謝った。何も頭突きすることはなかった。

「でも、近いよね……」

 山田が涙で掠れた声で、前を向いたまま呟く。

 私は息を整えながら「うん」と頷く。さっきより匂いが濃くなるのが格段に早い。
 足音も、わずかに聞こえる気がする。

「次、駄菓子屋の前まで行けば、あとは、全力で逃げよう」

 あとは直線だ。立ち止まる必要はない。

 けど、逆に言えば、化け物から、私たちをはっきりと確認できてしまう。



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