過去ログ - 2月の昼下がりに橘ありすと話すことについて
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7: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/02/07(火) 19:34:38.15 ID:0cqd1nr10
 パソコンの電源を落として、僕はなににも先行してまずシャワー室に向かった。
 熱いシャワーは、凝り固まった身体に沁みた。潤い以上のなにかが満ちるのを、僕は感じていた。

 身体中に纏わりついた汚れのような疲労感をある程度拭うと、やがて耐えがたい空腹が僕の思考を、ローマの騎兵のように着実に占有していった。
 最後に口にしたのは、昨日の晩にテイクアウトで頼んだぺパロニとブラックオリーヴのピザだった。
 事務所に備え付けてある冷蔵庫を、なにか気の紛れるものはないかと祈りながら開ける。
 だけどそこにあったのは、ドリンクホルダーにエナドリが数本と生卵が三つで、それらが白けたアンサンブルのように佇んでいるだけだった。
 望みがあるよりも、まったくもって望みの断たれた状況にある時ほど、なにかに祈ることが多い気がする。
 せめてもの、卵を炒りつけて胃に運ぶと、雀の涙ほどに腹は満ちた。

 人間というものは存外正直なつくりをしているらしく、今度は蝕むような睡魔が僕のもとを訪れる。
 僕の耳元で、まるで内緒話をするかのように、睡魔がなにごとかを囁く。
 どうせ今日は土曜日で、誰も来ないというのなら、ひと眠りしてから帰ってもいいだろうと思った。
 そうして一度気を抜いてしまえば、身体中の筋繊維がほどけてしまったように、なにも手につかない。

 椅子に座って背もたれに身体を預けると、まるでシルクのカバーをかけたように、穏やかに意識は薄れていった。


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