25: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/10(金) 21:10:50.27 ID:TTAc4R6C0
教室に戻ると、やっぱり、話題は中庭のカメのことで埋まっていた。
色がどうだった、とか、どこが割られていた、とか、何匹やられていた、とか。
私は何でもない風な顔をして一人で席に着いて(未来人はついてこなかった)、教科書を読むふりをしながら、何人かの会話に耳を傾けていた。
案の定、誰がやったのか、という話が一番盛り上がっているようだった。
話によると、屋上からは見えなかったけど、池に繋がっている用水路が、少し離れたところで石か何かでせき止められていて、水があまり流れなくなっていたらしい。多分、それで池が少し小さく見えたんだろう。
周りに石は落ちていなかったが、園芸部がたまに使うクワが1本なくなっていたので、おそらくが使われたのではないか、ということらしかった。
私は、クワなんて大きなモノだったらどこかに隠すのは難しいので、まだこの校舎の中にあるのかな、なんて考えたりしていた。
ふと東田の方を見ると、自分の席に座って教科書を読んでいるだけだった。今日の予習だろうか、と思った。
しばらく話を聞いていると、教室の後ろの方から、暗い顔をした滝野が扉を開けて入ってきた。ひと際大きな声で、目立ちたがり屋が滝野に向かって話しかける。
「滝野、よくカメの世話してたけど、何かしらねーの?」
少しガラの悪いタイプの女子が、何人かで「えー、ちえちゃん可哀想だよー」と笑いながら話しかけていたが、目立ちたがり屋は「うるせー」と言って、気にせず話しかけていた。
……この時は、無神経だな、くらいにしか思わなかったけど、今思い返すと、あの目立ちたがり屋は、やけに滝野に突っかかったり、変な質問をすることがよくあった。もしかしたら、そういうことだったのかもしれない。
今度会ったら話のネタにしよう。
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