26: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/10(金) 21:11:52.55 ID:TTAc4R6C0
話を戻す。
暗い顔をした滝野に、目立ちたがり屋はさらに続ける。
「ほら、みたろ? 中庭のカメが殺されてんの!」
さすがにここまで直接言うと、何人かの生徒は目立ちたがり屋にあまり良い視線は向けず、私もそのひとりだった。
滝野は入り口近くで立ち止まって、しばらく黙りこんだ後、ぽつりと何かを言った。
「お、おかにしくんが……」
あまりにも勢いのなさすぎる声で、最後の方は聞き取れなかった。
教室が息をひそめる。
滝野は、スカートの裾をぎゅっと握ってから、もう一度言った。
「お……岡西くんが、怪しい……とおもう」
私は、そんな馬鹿な、と思った。
教室にいたほとんどの人が、それを聞いてから2秒ほど黙って、各自の頭の中で言葉を理解してから、それから一気に教室は騒がしくなった。
滝野は少し焦って顔を上げていたけど、どうすることもできず、また俯いてその場に立ち止まっているだけだった。
このタイミング、この状況で、おそらくこのクラスで最も中庭に行った回数のある滝野の証言は、教室を盛り上げるには十分な材料だった。
私だって、たぶん、岡西のことをあまり知らなければ、同じように犯人は岡西だと思っただろう。
そして、この考えうる限り最も悪いタイミングで、岡西は、教室に入ってきてしまった。
扉が開いた瞬間、教室が音を忘れたように静まりかえる。
あまりに突然静かになったものだから、私も少し驚いてしまった。
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