過去ログ - 六畳世界から考察するチョコレートと恋愛ごとにおける関係
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2: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/15(水) 22:21:00.14 ID:AA8q51MQ0
ここに語るは、小さき私が二月十四日という日に果敢にも孤独に立ち向かい、見事に返り討ちに遭いながらも、それでも死中に活路を見出さんと睦まじい努力となけなしの蛮勇を振り絞りながら、汗や何だか汚らしい男汁を街中に振りまいてみせた物語である。
振りまいた水分は、いずれは蒸発し、雨と共に鴨川へと零れ落ち、琵琶湖疏水へと流れ溶けていったことだろう。もしかすると私のような悲しき男たちの汁の結露が現在の京都の河川を形成したのかもしれない。そうであれば、少しは自らの阿呆加減にも誇りが持てるやもしれぬ。きっとそんなことはないのだろうけれど。


3: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/15(水) 22:22:29.92 ID:AA8q51MQ0
まずは物語を語る上で必要になる、登場人物たちについて読者諸賢に伝えたいように思う。どのような人間が出るかも分からぬ物語など語られても、興味が湧いてこないことだろう。
当然ながらひとまず確定しているのは語り手である私だろう。私はさる大学の三回生である。四月になれば四回生であり、卒業して就職なり院に進むなりの進路をどんなに遅くても決めなくてはならぬ時期でもある。いや決断したところでもう間に合ってはいないだろうが。

次に小津。この男については、語るべきところが多々あるものの、私のように純粋で清らかであろう読者諸賢たちの心を汚すのもいけないので簡素に済ませよう。彼は一言で表すと妖怪である。人の弱い心に付け込み傷を抉り、それで飯を三杯も四杯も食べるようなおよそ人に誇れるような長所を持ち合わせない男である。私個人としては大いに認めたくないし今でもたまに後悔をすることもあるが、そんな彼は私のただ一人の友人である。

以下略



4: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/15(水) 22:24:39.88 ID:AA8q51MQ0
大まかにこの三人の阿呆が物語の中核を担う。しかしながら今から語るは乙女たちの祭りと称しても過言ではないバレンタインである。当然ながらむさ苦しい野郎だけでは話が成り立たない。二人の女性について、小さき私から慎ましく紹介させていただきたい。

一人目は羽貫さん。彼女は樋口氏や樋口氏とはただならぬ関係であるらしい城ヶ崎という人物の共通の知り合いで、歯科衛生士をしている。私も一度彼女の世話になったことがあるが、あれは男であれば誰でも経験してよかったと思える素晴らしい体験であった。また本人の思い切りのよいというか、気風のよいといった感じの性格には実に好感が持てることだろう。ただそんな彼女にも欠点があり、酔うと人の顔を舐める癖がある。しかしながらそんなこととは関係なく彼女は間違いようもなく美人であり、その魅惑的なスタイルには多くの男たちが挑んでは撃沈していると聞く。

二人目は明石さん。彼女は私や小津の一つ下の学年であり、工学部で建築を学んでいるらしい。彼女はどのような因果が雁字搦めになってそうなったのか分からないが、私のような阿呆と、なかなかに表現するには難度が高い、ウレシハズカシイ関係となった女性でもある。私にとって彼女は言い難いものの初めてそのような関係となった女性であり、私は彼女と接する度に帰宅してから自らの失敗を振り返っては六畳の部屋で一人震える日々を送っている。
以下略



5: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/15(水) 22:32:38.43 ID:AA8q51MQ0
ふと心に浮かんだままに私が書き始め見切り発車のごとき勢いで特に話のオチも決めていないようなスレッドを立てたことをここにお詫びいたします。しかしながら四畳半神話体系という作品は最近の私に大いに感動や阿呆な笑いを与えてくれた作品であり、その感動の勢いのままにこうして時節に沿おうとしたものを書こうとしてしまったことは何ら不思議ではないのです。読者諸兄には申し訳のない話ではありますが、どうぞ気楽な心持で「夜は短し歩けよ乙女」が公開されるよりも前にどうにかこの話が完結することをお祈りいただけることをお願い申し上げます。

次からはもうめんどくさい地の文はなしでやります 満足してしまったので 
師匠が代役であることは残念なお知らせに思いますが中井和哉氏であればきっと藤原氏とは違う新たな切り口の樋口師匠を演ぜられることでしょう
ではいつか ネタの鮮度が落ちきって熟成を通り越して発酵した頃に


6:名無しNIPPER[sage]
2017/02/16(木) 01:21:22.72 ID:12VZn0w7o
登美彦氏であらせられるか!?


7:名無しNIPPER[sage]
2017/02/16(木) 06:52:55.42 ID:REFDSq1Lo
めんどくさい地の文あってこその森見作品だろ!
野暮な事言ったが乙です 待ってるぞ


8:名無しNIPPER[sage]
2017/02/16(木) 10:58:02.06 ID:aFKE0B4jo
きたい


9: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/16(木) 22:50:53.24 ID:ZX+GwLVA0
時は二月十三日。金曜日であった。いきなり二月十四日の話でないことにおそらくは疑問符を心の中に抱かれた読者の方も多いであろうと思う。しかしながらここから私は人生で最も体感的に長いバレンタインデーの始まりへの階段を踏み出したのである。
その日私は大学の附属図書館で調べ物に取り組んでいた。別にそれは重要なことではないので内容は割愛させていただく。とにかく、私はその調べ物のためにほぼ一日を費やして、夕方にもなろうかという頃にようやく図書館を離れたのだった。あとは愛すべき我が六畳の城へと戻りひたむきに本と向き合うだけの窮屈な時間から解放された我が身を労われば今日自らに課した任務は終了となるはずだった。


10: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/16(木) 22:52:14.43 ID:ZX+GwLVA0
「先輩」
図書館を出て時計台の辺りへと差し掛かろうかというところでそのように私を呼ぶ声を背後から聞き取ると、私はくるりと後ろに回れ右をした。回った先には私の方へと歩み寄ってくる一人の女性がいた。彼女は理知的な眉をきりりとさせたままにつかつかと私の正面に立った。
「やぁ明石さん」と私は慣れ親しんだ調子で彼女にそう返した。私の目の前にいる彼女こそが先ほどの説明でも出てきた明石さんである。彼女は私の挨拶に軽く頭を下げると特に表情も変えることなく「これからお帰りですか。私もです」とだけ言った。


11: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/16(木) 22:54:24.95 ID:ZX+GwLVA0
こんなやり取りだけだと読者諸賢には私たちの間柄がただの親しい先輩後輩の関係に見えるかもしれないが、私と明石さんはちょっとした男女の関係にある。ただし、男女の仲といっても私たちはお互いにあはんうふんなどといったような浮ついた感じで触れ合ったりはしない。何なら肉体的な接触と言う話であればまだ手と手を繋ぎ合ったことがあるくらいである。
いい歳したオトナが恋愛関係でそんな初々しい中学生のような触れ合いでよいのか、と言う方もいることだろう。しかし、私と明石さんの仲は、昨今はびこっているようなそこいらの何だか間に合わせで生まれましたといわんばかりのインスタントな感情で結ばれているのではないのである。もっと深く、深すぎて沈んでしまってもう浮き上がらないほどの、精神的な繋がりがそこにはあるのだ。と私の方では勝手にそう思っている。


12: ◆jZl6E5/9IU[saga]
2017/02/16(木) 22:58:35.30 ID:ZX+GwLVA0
私は普段通りの気心の知れた彼女とのやり取りに対して内心では踊り狂っていた。その昔、『美しき青きドナウ』を流しながら桃色ブリーフ一丁で踊った何とも冒涜的な阿呆たちがいたが、今の私はその中に飛び込んで共に阿呆な踊りを披露したって構わないと思えるほどの幸福感を心に感じていた。仮に私が本当にそのような真似をしたとしても精神的な痛みはせいぜい二、三日引きこもる程度で癒えるだろうと思う。

何せ私には明石さんがいるのだ。他のどんな女性が私を軽蔑し距離と取るとしても、彼女はきっと桃色ブリーフ一丁の私に「また阿呆なことをしましたねぇ」などと笑って迎えてくれることだろう。


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