1:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/22(水) 21:37:10.19 ID:wRm0szz8O
「プロデューサーさん」
「……ああ。……はい、そうですね。久しぶり、です」
「久しぶり。……本当の本当に、久しぶり」
「……ああ」
「感じます。プロデューサーさんを。久しぶりの……ずっとずうっと感じられなかった、半年ぶりの、プロデューサーさんを」
「こうして正面から見つめ合って確かめるその姿も。お腹の奥へずんと響くようなその声も。胸を震わせ高鳴らせてくれるその匂いも」
「感じます。ぜんぶ、ぜんぶを」
「触れ合ってはいないけれど。貴方はそこへ座っていて、まゆはこの扉の前にいて。離れてはいるけれど」
「それでも感じられるほど。まゆの触れるその身体の、まゆに触れてくれるその身体の感触が、まるで感じられるように思えるほど」
「感じます。プロデューサーさんを。いっぱい、たくさん、ぜんぶぜんぶ」
「……うふ」
「うふ。……ええ、ごめんなさい」
「困ってしまいますよね。こんな、突然」
「突然現れて、突然語り出して」
「……突然。半年前、突然貴方の前から居なくなっておきながら」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/22(水) 21:38:50.79 ID:wRm0szz8O
「分かります。プロデューサーさんが今、困惑していること」
「そして分かっています。プロデューサーさんがまゆに怒っていること」
「突然貴方から離れて。別の人にプロデュースをされるようになって。プロダクションでも仕事場でも、どんなところでも、貴方のことを避けて」
「そんなまゆを怒っていること」
「まゆが居なくなってとても悲しんでくれたこと。まゆへの、自分への、いろいろなたくさんが混ざり合ってぐちゃぐちゃになった苦しい想いに涙を流してくれたこと。まゆを思って、まゆのために、辛い想いを抱いてくれたこと」
3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/22(水) 21:39:55.16 ID:wRm0szz8O
「……」
「……ああ、ありがとうございます」
「変わりませんね、プロデューサーさんは。今もあの頃のまま、まゆの真剣な想いを無下にせず受け入れてくれる」
「優しくて、温かくて、大きくて」
「あの頃のまま。……貴方はずっと、変わらず、そのままで」
4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/22(水) 21:41:07.68 ID:wRm0szz8O
「今、まゆは信じられています」
「でもあの頃は……貴方と別れるその前までは、信じたくて……でも、今のように信じることができなかったんです」
「不安でした。今はこんなにも貴方のことを好きだけど、時を重ねた先でも、この想いは変わらずに抱いていられるのか」
「こんなにも恋しい貴方への熱も、いつか冷めてしまうんじゃないか。この恋の向く先が貴方以外を指してしまうんじゃないか」
「こんなにも愛おしい貴方のことを、まゆは、裏切らずにいられるのか。好きで居続けて、恋をし続けて、そうして愛し続けていられるのか」
5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/22(水) 21:41:43.87 ID:wRm0szz8O
「だから、不安だったんです」
「一目惚れをしたまゆは……また、今度は別の誰かに一目惚れをしてしまうのかもしれない」
「今は貴方を愛せているけれど……でも、もしかしたら。一目惚れで貴方を愛するようになったまゆは、一目惚れで貴方以外を愛するようになってしまうのかもしれない」
「そう思って不安だったんです」
「好きだけど。恋しく、愛おしく思っているけれど、だからこそ不安だったんです」
6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/02/22(水) 21:45:03.39 ID:wRm0szz8O
「……そうして、まゆは貴方から離れました」
「離れて半年間。貴方から触れられないように、貴方とは繋がらないように、貴方の居ない世界で過ごしてきました」
「スケジュールを確認して貴方とは重ならないよう。重なり合いそうな時には遠目から貴方を見て、気付かれてはしまわないよう。ずっと、半年間ずうっと、徹底的に」
「そして分かったんです」
「どうしようもなく分かりました。どうにもならないほど信じられました。どうしようもなくどうにもならないほど、この想いは、恋は、愛は、本物なんだと」
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