775:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:09:10.36 ID:ha7ZcpN9o
ざわめき、叫び、銃声、ポケモンの咆哮、ヘリのプロペラ。
足音、呼吸、鼓動、しわぶき、流れる水。
人々は戦いを遠巻きに見ていて、そこは大きな道路が交差する五つ角。
その中心に立つ梨子を囲んで、まるで円形闘技場のような。
776:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:09:46.04 ID:ha7ZcpN9o
バクフーンと渡り合っているローブシンへ、横ざまに突き出されるメガルカリオの拳。
格闘タイプの猛撃、“インファイト”が炸裂する!
連打、連打、連打!
大柄なローブシンの体が徐々に浮き、トドメと振り抜かれた右拳がその体を道路へと打ち転がしている。
777:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:12:07.16 ID:ha7ZcpN9o
それは下、マンホールから吹き上げる水の暴圧。
天を衝いた“ハイドロポンプ”の噴射と共に、その水の主は優美な麗身を地上へと晒している。
肌色の体は潤いに濡れた質感を宿していて、尾を覆う鱗は光を反射して七色に燦めく。
頭部には薄紅色の触覚と長いヒレ。類するならば魚か蛇か…いずれにせよ、その姿は美しい。
778:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:14:30.26 ID:ha7ZcpN9o
曜「“ハイドロポンプ”拡散型っ!!」
初手、ミロカロスはメガバシャーモを仕留めるべく暴水を放つ!
779:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:15:53.12 ID:ha7ZcpN9o
『ロオオオッ!!!』
『フィオオォッ……!』
780:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:18:05.14 ID:ha7ZcpN9o
炎蹴、割れるアスファルト。
蒼紅二匹のメガシンカ体、ポケモン、トレーナー共に実力は伯仲。
互角に互角を重ねれば、趨勢を決定付けたのはやはりタイプ相性。
いや、あるいは足と拳のリーチの差か。
781:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:18:31.96 ID:ha7ZcpN9o
渡辺曜は苦悩している。
ウツロイドに苛まれているから?
いや、今だけの話ではない。
梨子という少女が引っ越してきて、(可愛い子だな、都会っぽくて)と月並みな感慨を抱き、千歌が梨子に強い興味を示し、見る間に仲良くなって…
782:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:19:00.30 ID:ha7ZcpN9o
梨子「ねえ、曜ちゃん。曜ちゃんって、何をしても失敗したことがないって言ってたよね」
無言。
曜は今にも梨子へと掴み掛かりそうな暴力衝動を抑えるように、小さく頷くだけ。
783:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:19:26.75 ID:ha7ZcpN9o
曜(胸の中に宿った棘を、異物感を、“あの子が憎い”だなんて醜い自分を、私は嫌悪してるんだ。ずっと、ずっと…)
梨子「曜ちゃんはなんでも要領よくこなせるから、今まで嫉妬したことがなかったんだね」
曜(こんな気持ちを抱いてる私は醜い人間だ。梨子ちゃんは何も悪くないのに。千歌ちゃんは梨子ちゃんの事が好きなのに)
784:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:19:57.86 ID:ha7ZcpN9o
目に怒気を燃やし、激昂に叫ぶ。
しかし梨子は退かない。もう三歩、曜へと歩み寄っている。
伸ばせば届く位置だ。曜は手を、梨子の肩を掴んでいる。
力は万力のように強い。
785:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/25(土) 18:20:29.52 ID:ha7ZcpN9o
緩やかに吹く夜風は、二人の周囲からゆっくりと粉塵を払っていく。
懺悔の後、赦しを求める徒のような目で、曜は梨子を見つめている。問いかける。
曜「私は……梨子ちゃんと、友達でも、いいのかな」
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