過去ログ - 最初のファンから、駆け出すキミへ(小日向美穂If小説)
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7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:19:44.84 ID:3RRQd8Ra0
そして、その時は突然訪れた。
三学期の期末試験も終わり、高校は採点の為の家庭学習期間に入っていた。
「1、2、3、ステップ!レッスン、楽しいなぁ……。これで私もアイドル気分!なんて。」
美穂はメニューが終わり、他の生徒が帰ったレッスンルームで一人で自主練をしていた。そう言えば先程から先生の姿が見えない。
「すみません、小日向美穂さんですか?」
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:20:11.49 ID:3RRQd8Ra0
上り坂の入口でまた美穂とはち合わせた。
「あ!あっちゃん!!」
いつにも増して機嫌が良いらしく、立ち漕ぎでこちらに向かってくる。
「ん、お疲れ。どうしたんだよ、随分ご機嫌みたいだけど。」
「私、アイドルになれるよ!なれるんだよ!!しかも美城プロ!!」
以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:20:38.83 ID:3RRQd8Ra0
息も整わないままベッドに倒れ込む。
「なんで俺は……くそっくそっ!!」
美穂の夢が叶うのに、それは自分に取っても嬉しい事の筈なのに、あの瞬間、悲しくなった自分が許せなかった。それどころか自分は。
「くそ!!」


10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:22:07.25 ID:3RRQd8Ra0
翌日の朝、美穂が家を出ると淳は家の前で待っていた。
「あっちゃん……」
「その……昨日はごめん。俺、ちょっと混乱してた。」
「ううん、気にしなくていいよ。」
いつも通り並んで走る二人に会話は起きなかった。
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:22:35.52 ID:3RRQd8Ra0
日中の授業も午後の部活も、淳は上の空だった。グラウンドで明日の朝練の為に塩カルをまいている時、先輩に尻を蹴飛ばされた。
「いたっ!?」
「坂門ぉ、お前今日どうしたんだよ。なんかあったろ。」
「……はい。」
三年の先輩は微笑むと、ぽんと肩を叩いた。
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:23:03.48 ID:3RRQd8Ra0
そしてその日も、上り坂の入口で美穂とはち合わせた。
「あっ……」
「美穂……」
「なぁ――」何を言うかも決まらず言いかけた声は重なった声に消えた。
「ね、ねぇ。明日放課後、一緒に養成所に来ない?」
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:23:47.81 ID:3RRQd8Ra0
翌日、放課後二人で電車に乗って美穂の通う養成所に向かった。高い建物と多くの店が立ち並ぶそこは、普段学校の帰りに友達と寄り道する商店街と比べて都会に感じた。
「ここだよ。」
美穂が足を止めたのは五階建てのビルだった。
「いつもここで……?」
「そうだよ。ほら、入ろう?」
以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:24:15.44 ID:3RRQd8Ra0
目を腫らしてて出てきた淳を見て、美穂は何も言わなかった。
「それでは、私はこれで。」
「あっ、ありがとうございました!……あっちゃん、私達も帰ろうか。」
「……おう。」

以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:24:43.22 ID:3RRQd8Ra0
春休みも残すところ数日となった夜、美穂から淳にメールが届いた。
『明日の昼、熊本空港から発ちます。』
淳は返信せずにメールを閉じた。


以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:25:09.53 ID:3RRQd8Ra0
淳が空港に着くと、鈴木と共にスーツケースを引いた美穂が待っていた。

「お待たせ。」

「あっちゃん。」
以下略



17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 00:25:35.91 ID:3RRQd8Ra0
坂を下り終わり、桜並木の下で自転車を止める。

馴染みの道を一人で歩く。あれから、一度だけ美穂が公衆電話で電話を掛けてきた時があった。慣れない都会での生活や寂しさ、社会人としての責任や、給料を貰って人前でパフォーマンスする事のプレッシャー、それらを美穂は吐き出すように淳に話した。そして、ひとしきり話し終えると
『じゃあ、あっちゃん達ファンの為に頑張るね!』と。
『アイドル人生全うしたら、いつでも帰ってくればいいよ。その時は幼馴染として待ってるから。』
以下略



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