過去ログ - 後輩「また死にたくなりましたか?」
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1:名無しNIPPER[saga]
2017/04/03(月) 17:53:20.79 ID:VFCWYClv0
◇
「大きくなっても、ずーっと一緒にいようね! 」
ここ数ヶ月、同じ夢を見る。最近まで忘れていた幼い頃の淡い記憶、のようなもの。その夢の最後は決まってひとつの約束をする所で終わる。見晴らしのいい場所で、この約束をする所でだ。
夢の続きが気になり、夢の中の時間と格闘するのだが、いくら目覚めまいと、それを見ようとすれども、固く閉ざされた分厚い扉のようにそれ以上の続きは見ることが出来ない。
自分の中で美化されているから曖昧にしか覚えていないのかもしれないが、それも案外悪くないのかもしれない。
とはいえ、そんな約束をした相手が居るというのは少し自慢になったりして、友達に自慢した。鼻で笑われた。ちょっと悔しい。
ベッドから身体を起こし、辺りを見渡す。
外の景色はまだ暗い。時計は4時を指している。
瞼が重い。もう一度寝よう。
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2:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 17:54:10.79 ID:VFCWYClv0
◇
「ハル、いつまで寝てるの?」
3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 17:55:20.42 ID:VFCWYClv0
どんな子なのと聞かれたら、とりあえず美少女ではある。
身長は大きくもなく小さくもなく、小学校の大半は俺の方が身長が低かった。タレ目で小動物みたい、ファンクラブとかありそう(中学の頃にはそんな大それたものではないにしろ小規模なものはあったらしい)
こんな幼馴染がいると知られたら、どこかで誰かに呪われそう。
4:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 17:56:02.33 ID:VFCWYClv0
朝食はいつも姉が用意してくれている。親はまだ寝ている。毎日遅くまで働いて、俺達が学校に行った頃に起きてまた会社に行く。この生活はもう3年くらい続いている。
家事は最初の方こそ一緒にやったりしていたのだが、ここ数年はもっぱら姉に頼りっきりである。
「あんたさ、今日バイトだよね? 」
5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 17:56:45.91 ID:VFCWYClv0
◇
朝食を食べ終わり、身支度をして家を出る。家の前には、幼馴染の女の子。電子端末を片手に持ちながら待っている彼女に、なんだかなーと思いつつ、声をかける。
6:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 17:58:05.65 ID:VFCWYClv0
彼女は少し下を向いて、何か考えているような、神妙な顔をしている。
「いや、別に一緒に登校したくないとか、そういうことじゃないからな?」
自分で言ってから、どこのツンデレだよと少し後悔した。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 17:59:08.45 ID:VFCWYClv0
◇
校門の前で、体育館へ向かう彼女と別れ、教室へ向かう。
8:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 17:59:42.51 ID:VFCWYClv0
でも、俺は千咲のことをどう思っているのだろう。
だから、俺はいつもそうやってきたように言葉を濁して、「そんなんじゃないよ 」としか言う他なかった。
「好きなやつとか、いないんだろ? だったら片桐さんとそういう仲になるのも、悪くないんじゃないか? 」
9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 18:00:30.89 ID:VFCWYClv0
「まぁ……もし仮に現実だとしたら、会ってみたい、とは思うな 」
これは本心だ。会ってどうにかなるわけでもないし、昔の約束だから覚えていなくても無理はないけれども。
「ハルがそこまで言うなら、きっと現実なんだろうな 」
10:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 18:01:09.32 ID:VFCWYClv0
◇
「今週で学校は最後だぞ。最後の週だからってお前ら油断するなよ 」
担任がSHRでそんなことを言った。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 18:01:44.83 ID:VFCWYClv0
◇
放課後になり、バイト先へと向かう。バイトはコンビニで、家と学校の中間地点、よりちょっと家の近くにある。
週4勤務だとあまり稼げるわけでもないのだけれども、なんだかずっと家に居てもなにもすることはないし、なにより親にずっと頼っているのもな……と思い、高1の夏から働き始めた。
12:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 18:02:25.10 ID:VFCWYClv0
「いや、できてないです。夏休みの俺のシフト見ましたよね? 」
「あー、見たよ。聞いてみただけ、世間話の一環だよ。きみ、なかなかモテそうだし 」
モテません。関わりのある女子だって、片手で数えることができるほどしか居ない。
13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 18:03:31.90 ID:VFCWYClv0
◇
バイトが終わる時間になると、辺りはすっかり夕焼けに染まっていた。
うちのコンビニは、場所のわりに弁当の廃棄が多く、週に何回かは食費も浮くから廃棄を貰って食べることにしている。
しかし、今日はなぜかひとつも廃棄はなかった。
14:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 18:04:22.18 ID:VFCWYClv0
「だーれだ」という声がするが、こんなことをするのは知り合いのなかでこいつしかいない。
「お前か」
手を外され、そいつが立っている方を見ると、やはりそこには後輩の「なぎさ」がいた。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 18:04:56.73 ID:VFCWYClv0
「そういえば、先輩とたまにここで話すようになって、もう3年くらいですか? 」
言われてみると、確かにこいつとここで初めて会ったのは、中3の夏くらいだった。
あの時はたしか、家に帰るまでに時間を潰さなくてはいけなくて、下校途中に寄り道をしたくなって、ここでぼーっとしようと思っていたら先客がいて、自分と同じ中学校の制服だったから話しかけたんだっけか。
16:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 18:05:45.02 ID:VFCWYClv0
買った缶コーヒーを啜りながら、夕焼けと街が綺麗だな……と思っていると、後輩が突然立ち上がった。
「あの、先輩。夏休みの間、バイトしようと思いまして、先輩と同じところって大丈夫ですか? 」
「ほう、人員的には空いていると思うけど、なんでまた 」
17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 18:06:13.83 ID:VFCWYClv0
店にとっても都合がいいし、自分にとっても暇なときの話し相手という点で都合がいいので、二つ返事で返しておいた。
「じゃ、店長に言っておくから、今週中に面接受けてね 」
「はい、わかりました。よろしくお願いします 」
18:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 18:07:08.16 ID:VFCWYClv0
◇
帰宅して、自分の部屋に入る。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 18:07:40.33 ID:VFCWYClv0
◇
早く寝た日は、必然に早く目が覚める。窓からの朝陽。カーテンを閉めるのを忘れていた。
部屋にいても二度寝するだけなので、リビングに降りた。
20:名無しNIPPER[saga sage]
2017/04/03(月) 18:08:13.27 ID:VFCWYClv0
多分、あれだな。養われたい願望。待ってたらご飯が出てくる。さいこう。いや、いつもだけどさ。
なんかどこかから養ってくれる許嫁とかお嬢様だとかが現れないかな、と少し考えたが、どう考えてもギャルゲ並みの妄想だった。
なにより、今とそんなに変わんなくねと思った。あれ、俺恵まれてる?
21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/03(月) 18:09:11.51 ID:VFCWYClv0
その後もなんだか落ち着かなくて、多分まだ家にいるであろう千咲に軽く連絡をして、もう家を出ることにした。
久しぶりに1人で向かう通学路は、なんとなく中学を思い出した。
学校に到着する。今日は一番乗りだった。何かしようかなと思って参考書とにらめっこをする。
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