過去ログ - 少年「色とりどりの傘の町」
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1: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 09:23:09.84 ID:43HseE500
ザアアァアアァアアァァ……

少年「大丈夫? 疲れない?」

少女「ううん。全然辛くないよ」

少年(この小さな町では、一日に何度も信じられない勢いの雨が降る)

少年(空に突如大きな「波紋」が広がると、雲も無いのに雨が降り出す)

少年(道を歩く人達は、当然のように傘を「作り出す」事が出来るんだ)

少年(彼らの傘は鮮やかな色をしていて、雨を防ぐ以外にも、何かの能力がある)

少年(例えば少女の傘は、「花を降らす」事が出来る)

少年(そんな傘の町の中で、唯一僕だけが傘を作れない)

少年(いつも少女の傘に入れてもらう事で雨をしのいでいる)

少年(他者が握ると消えてしまうから、それを支える事すら出来ない)バチャ

少年(ふと下を向くと、水たまりに映った自分の暗い顔と目が合う)

少年(ああ、情けないなぁ)

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2: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 09:26:48.30 ID:43HseE500
「はい、それでは皆さん傘を作って」

少年(学校では、傘の能力を伸ばす授業がある)

少年(それぞれの能力に対し、先生はその伸ばし方を教えてくれる)
以下略



3: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:09:15.29 ID:43HseE500
少年(授業が終われば、皆は笑いながら遊びに行く)

少年(彼らは自分達の傘を使って遊んでいる)

少年(シャボン玉を作る傘、少しだけ宙に浮かぶ事の出来る傘、風を起こす傘……)
以下略



4: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:10:30.99 ID:43HseE500
少年(傘を出すって、どんな感覚なんだろう)

少年(何も無い所から傘を生み出すなんて、どう考えても分からない)

少年(今日もこうして、未知の力を引き出そうと頑張ってみるけれど)
以下略



5: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:12:19.26 ID:43HseE500
少女「気にする事ないよ。まだ傘が目覚めてないだけだって」

少年「そうかな。一日中ずっと考えているんだけど、どうしても感覚が分からない」

少女「うーん、確かに感覚は大事だよね。でも、案外急に出来るようになるかもしれないよ」
以下略



6: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:13:34.56 ID:43HseE500
少女「気にする事ないよ。まだ傘が目覚めてないだけだって」

少年「そうかな。一日中ずっと考えているんだけど、どうしても感覚が分からない」

少女「うーん、確かに感覚は大事だよね。でも、案外急に出来るようになるかもしれないよ」
以下略



7: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:15:26.89 ID:43HseE500
少年(ああ、少女と居ると心がふわふわして心地良いなぁ)

少年(……でも、少女は友達が多い。僕にとっての友達は彼女だけでも、少女にとっては多数の中の一つ……)

少年(ああ、駄目だ駄目だ。一人になると暗い事しか考えられない)
以下略



8: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:17:59.95 ID:43HseE500
少女「おはよー、少年」ニコ

少年「……」

少女「あれ、どうしたの?」
以下略



9: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:20:17.48 ID:43HseE500
「遊びに行こうぜ!」

「今日はあっちに集まろう」

少年「……」カリカリ
以下略



10: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:22:18.97 ID:43HseE500
少年(いつもの帰り道が、やけに広く寂しく感じる)

少年(遠くから子供達の遊ぶ声がする)

少年(彼らは何がそんなに面白いんだろう)
以下略



11: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:23:32.71 ID:43HseE500
ザアアアアアアァァァァァァ

少年「がっ……!! っ……ぅ……!」

少年(強い強い豪雨が僕を呑み込む)
以下略



12: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:28:15.98 ID:43HseE500
少年「……ううっ」フラッ

少年(どうやら意識を失っていたようだ。立ち上がろうとするとまだふらついてしまう)

少年(壁に手をついて、ゆっくりと呼吸を整えて……ようやく顔を上げる事が出来た)
以下略



13: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:30:22.76 ID:43HseE500
少年(少女と話さなくなってから、一か月が経った)

少年(少女は完全に女子グループに入っている。最初からそうであったかのように)

少年(僕は道端の雑草のように、ひっそりと影を薄くする)
以下略



14: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:32:09.32 ID:43HseE500
少年(ああ、帰り道に雨を恐れて歩くのも、当たり前になっちゃったな)

少年(今は、大丈夫……かな?)

少年(出来るだけ屋根がある所を選んで進もう)
以下略



15: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:33:30.71 ID:43HseE500
少年(それから、少女は少しずつ一人になる事が多くなっていった)

少年(忘れ物……と言うよりも、なくし物が増えるようになった)

少年(間違いない、あいつらの仕業だ)
以下略



16: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:34:35.03 ID:43HseE500
少年(少女、今日も一人だ……人の事は言えないんだけど)

少年(遠くで女子達が少女を見て笑っている)

少年(どうしてそうやって人を見下して笑えるんだ?)
以下略



17: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 18:38:58.46 ID:43HseE500
「はい、今日は傘の発表をしてみましょう。二、三人でチームを作って」

少年(うわあ、一番嫌な授業だ。チームか……)

少年(組んでもらえる相手が居ない僕は、ただ下を向いて余りが出るのを待つ)
以下略



18:名無しNIPPER[sage]
2017/04/10(月) 19:18:49.70 ID:1X4QP5IK0
ぐあ、辛ぇ


19: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 19:27:04.65 ID:43HseE500
どうせ何も出来ない。

少年『――違うだろ』

少年(水たまりに映った心の自分が、僕の目を見て話しかけてくる)
以下略



20: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 19:31:20.07 ID:43HseE500
「え、あれって……」

「うわ、あいつ傘持ってる……何だあれ、透明な傘?」

「あんな傘初めて見た!」
以下略



21: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2017/04/10(月) 19:40:19.72 ID:43HseE500
ザアアァアァアァアァ……

少年「相変わらず、すごい雨だねぇ」

少女「うん。いつもよりはちょっと穏やかだけど」
以下略



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