過去ログ - 魔術士オーフェン無謀編・死にたい奴から前に出ろ!
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10:1[saga]
2017/04/15(土) 02:44:01.98 ID:Ip5evVVC0

「ね、ねえ、オーフェン……」

 歯の根が合わないらしく、かちかちという音を響かせながら、コンスタンスが恐る恐ると言った感じで口を開く。

「こ、この利息の割合……」

「んだよ。なに言われても、それよりは下げらんねえぞ」

「いや、あの……適法内……というか、物凄い良心的な利率の気がするんだけど……書き間違えてない?」

「? 見せてみろよ」

 震えるコンスタンスから書面を受け取り、読み直してみる――内容は自分の頭に入っているものと寸分の違いもない。

「いや、この数字で合ってるぞ」

 こともなげにそう返したオーフェンに――

「嘘よぉぉぉおおおお!」

 コンスタンスは甲高い声で絶叫した。誰にでもない呼びかけ。
 あるいは、それは世界そのものに対する訴えであったのかもしれない。

 真正面から予想もしない大音声を浴びせられて、オーフェンは思わずよろめいた。間髪入れずにコンスタンスが畳みかける。

「おかしいじゃない! とても払えないような高利貸しをやってそーなのがあんたでしょ!
 払えない人には容赦なく魔術を叩き込んで、家に放火したり犬の死体を放り込んだりするんでしょ!
 こんな低金利で良心的な返済プランを組むなんて、そんなの全然オーフェンじゃないわ!」

「おいコラ、人聞きの悪いことを言うんじゃねえ!」

「怖いぃぃぃぃ!」

「何がだ!?」

 おそらく防御態勢なのだろう。ダンゴ虫のようにその場で座り込み頭を抱えて丸まったコンスタンスを見下ろしながら、
 オーフェンは努めて冷静な――少なくともそう聞こえるような――声音で諭す。

「あ、あのなあ、コギー――モグリの金貸しを利用するのなんざ、よっぽど追いつめられてる奴だけなんだよ。
 おまけにトトカンタの金融業はあのオストワルドが仕切ってやがんだ。
 派手にやったら面倒なことになるし、回収役だって俺しかいねえ。夜逃げされる可能性は小さくしときたいだろ」

「……」

 頭を覆う腕の隙間から、疑わしげな視線を向けてくるコンスタンス。

 しばらく待つと、彼女はゆっくりと立ち上がって見せた。森の中で羆と遭遇した人間が、刺激しないよう後ずさりする様子にも見えたが。

「分かってくれたか」

 オーフェンの言葉を無視して、コンスタンスは再び机の上の書類を片手で取り上げた。

 そして、もう片方の手でポケットから引っ張り出したのはマッチ箱である。
 彼女に喫煙の習慣はなかった筈なので、道端で配られていたものでも貰ったのだろうが。

 その行動の是非を問うよりも早く、コンスタンスはマッチを一本摘まみ出し、火を点けていた。そのまま紙の裏面に近づける。

 しばしの空白の後、オーフェンはようやく言葉を絞り出した。


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