過去ログ - 魔術士オーフェン無謀編・死にたい奴から前に出ろ!
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2017/04/15(土) 02:50:02.89 ID:Ip5evVVC0
◇◇◇
人生最大の麻薬とは夢を追うことではないだろうか。
どのような苦難も、最後に待っている夢の達成を想えば盲目的に受け入れることができる。夢は痛覚を麻痺させ、走り続けるカロリーにすらなった。
夢が破れるまで、つまりはその夢が叶わぬものであることを自覚するまで、人は好きなだけその麻薬を貪ることができる。
もしも最期まで夢を追い続けることができるのなら、
それが他人から見てどれだけ卑小な生き方であったとしても、当人にとっては幸福な人生であることは間違いないだろう……
「というわけで、あなたの夢を叶える手伝いをしたいわけです」
にっこりと満面の笑みを浮かべながら、オーフェンは紳士的にそんな台詞を述べた。
マーシャルストリート商店街の一角にある雑貨屋の店先である。
ぴしりとした姿勢で佇むオーフェンの眼前には、雑貨屋の店主である禿頭の中年男性が、半開きにした店の扉から顔だけを出すようにしている。
店の主人の表情は、御世辞にも明るいとは言い難い。むしろ、あからさまに何か胡散臭いものを見るような顔つきだった。
それでも構わず、続ける。誠意を示し続ければいつか届くと、今だけ都合よくオーフェンは信じることにしていた。
「いまならなんと、こんな低利率で金貨10枚から! このチャンスを――」
ピシャリ!
まさにそんな擬音が相応しいような勢いで、雑貨屋の主人が扉を閉めた。拒絶の名残である風圧がオーフェンの頬を撫でる。
「……」
空を仰ぎ見ながら、オーフェンは悲哀を浮かべて独りごちた。
「世知辛いな……いったいいつから、人は人を信じることが出来なくなったのだろうか……」
その答え、という訳でもないだろうが。
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