過去ログ - 魔術士オーフェン無謀編・死にたい奴から前に出ろ!
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24:1[saga]
2017/04/15(土) 02:54:29.76 ID:Ip5evVVC0
◇◇◇

 トトカンタには港がある――と言っても、トトカンタ市自体が海に面しているというわけではない。

 海まで続く運河に即して造られた河川港である。規模は大きく、大陸外部を周回する蒸気船が入ってこれるほどだ。

 そういうわけで、今日もトトカンタ港は賑わっていた。
 定期便に乗ろうとする人間、降りようとする人間、荷揚げの水夫に、彼らの財布を狙う串焼きの屋台。

 そんなものがひしめき合っているこの場所は、"商都"と呼ばれるこの街の特色を端的に表しているともいえるのだろう。

「で、こんな場所になんの用なの?」

 その辺で買ってきたらしいじゃがバターなど頬張りつつ、コンスタンスが聞いてくる。

 オーフェンとコンスタンスは、船着き場よりも一段高くなっている堤防の上に立っていた。
 あれから爆砕した石畳を魔術で修復し、逃げるように歩いてきた先がここだったのだが。

 十数メートルほど先の船着き場では、ちょうど港に入ってきた商船が荷卸しを始めている。
 その光景を見つめながら、オーフェンは言った。

「いや、だから金貸しの相手を探しに来たんだってば」

「オーフェンってば、まだ諦めてなかったわけ? いーい? 人生は諦めも肝心よ。
 オーフェンの場合、お金を儲けるってことに関してはもうほんと完全に望みを捨てた方が良いわよ」

「言ってやがれ」

 吐き捨てるように鼻を鳴らして、オーフェンはコンスタンスが手にしている紙皿の上から茹でた芋を取り上げた。口に放り込む。

「あー! 何すんのよオーフェン! ただでさえ今月は厳しいのに!」

「なら屋台なんかで買うなよ。節約しろ、節約」

「だって屋台の食べ物ってなんか美味しそーに見えるじゃない!
 だから買っちゃってもしょうがないけどお金はないし小腹は減るしでしょうがないじゃない! 分かるでしょ!?」

「さっぱり分からん」

 首を傾げつつ、咀嚼を終え炭水化物の塊を飲み下す。
 空になった紙皿の向こうから恨めしげにこちらを見つめてくるコンスタンスに、オーフェンは明後日の方を向いて呟いた

「腹が減っては戦は出来んと言うだろーが」

「そんなの関係ないでしょ誤魔化さないで新しいの買ってきて――戦?」

 聞きとがめたのか、コンスタンスはきょとんとその一語を繰り返した。そしてすぐに半眼になって言ってくる。

「あんたもしかして、今度は船を沈めて、その持ち主にお金を貸そうとか思ってる?」

「……お前が俺のことをどう思ってるのかはよーく分かった」

 呻いてから、オーフェンは船着き場を手で示した。

 停まっているのは大型の蒸気船である。いまは燃料の補給と、運んできた荷物の確認が並行して行われているらしかった。



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