13:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 23:49:40.18 ID:EiI7XmX40
十分ほど無言の空間があっただろうか。そんな静寂を破ったのは、なんと新堂さんであった。
「ややお嬢さま、プロデューサー。すいません」
「どうしたのよ?」
「いえ、この新堂ついうっかりお酒のストックを倉庫から持ってくるのを忘れておりまして。今から取りに行きたいのですが、留守を頼んでもよろしいでしょうか?」
「え、ええ。構いませんよ」
14:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 23:50:07.40 ID:EiI7XmX40
今までは新堂さんがいたから、なんら会話が無くとも大丈夫だったのだが、二人っきりの今は、有り体に言えばとても気まずい。
伊織も同じように感じたのか、さっきからチラチラとこちらに視線を感じる。なんなら時々目があっている。
他の客がいなくてよかった。いたら、この気まずさでお酒がまずくしてしまうところだ。
「最近どうだ?」
先に俺が耐えきれなくなり、まるで思春期の娘に声をかける父親のように聞いてしまった。
15:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 23:50:52.80 ID:EiI7XmX40
ここで終わりかと本気でそう思った。
そう思ったらなぜだか涙が止まらなかった。
それは悔しさだったり、自分の馬鹿さ加減への呆れだったり、その他諸々混ざったものであった。
「なに泣いてんのよ」
あの日と同じように呆れた表情で伊織は俺にそう言ってきた。
16:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 23:51:23.82 ID:EiI7XmX40
「伊織」
「なによ」
「すまなかった」
「何に対して謝ってるのよ」
「……色々あるけれども、そうだな。お前を信じなかったことかな」
17:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 23:51:50.95 ID:EiI7XmX40
「恭二のことはもともと知っててね。パーティとかでよく会ってたし。それで。家出してアイドルでしょ?似た境遇としては見過ごせなくてね。下の名前で呼ぶのは、家じゃなくて自身を見てほしいって思うもんなのよ、私たちみたいなのはね。そうそう、あいつも自分の担当のプロデューサーと付き合ってるのよ、これオフレコねた
とは俺の腕の中にいる伊織の言葉。
何ともなし、ただの俺の独り相撲だったのだ。
「ったく、どんだけ寂しかったと思うのよ。本当に終わっちゃうんじゃないかって、怖かったんだからね」
「珍しく素直だな、伊織」
18:名無しNIPPER[sage]
2017/05/05(金) 23:52:36.24 ID:EiI7XmX40
翌日、首筋に絆創膏をつけた伊織と頬に紅葉をつけた俺が、事務所で散々からかわれたのは言うまでもない。
まぁいいさ。名誉の勲章みたいなもんだ。
19:名無しNIPPER
2017/05/05(金) 23:53:03.25 ID:EiI7XmX40
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
伊織、お誕生日おめでとう!
20:名無しNIPPER[sage]
2017/05/06(土) 00:18:10.28 ID:9pjS/Qd3O
キモいから
21:名無しNIPPER[sage]
2017/05/06(土) 13:07:16.75 ID:ANCMYCZf0
乙
いいね
22:名無しNIPPER[sage]
2017/05/07(日) 03:16:20.75 ID:h3JCBRBWo
乙乙
のういうの好き
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