過去ログ - LiPPS「MEGALOUNIT」
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653:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:29:00.85 ID:vQzT5qlo0
 立ち尽くす俺に向かって、服部さんは、その場で会釈をした。

 俺も、軽く頭を下げた。

 何と言って声をかけるべきか、かけざるべきか迷っているうちに、彼女はやはりその場で、控えめに手を振った。
以下略



654:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:33:41.03 ID:vQzT5qlo0
 トイレから出ると、一般客の入場門も開放したらしく、会場のホールにはさらに大勢の人でごった返した。

 これは敵わないと思い、足早にそこを立ち去ろうとしたが、元職場の部長に呼び止められてしまった。

 見ると、どうやら傘下の会社連中にまで声を掛け、連れて来れるだけ連れて来たらしい。
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655:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:38:25.74 ID:vQzT5qlo0
 LIPPSの出番は、最後から二番目との事だった。

 出番前の待機場所、ステージ入りする方法、持ち時間、捌ける方向等について担当スタッフから説明を受ける。

 事前に打ち合わせた内容と変更点が無い事を確認して、俺は了承した。
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656:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:40:54.02 ID:vQzT5qlo0
 誰も通らない通路の手すりにもたれかかり、ようやくタバコに火を付けた。

 遠くに見える高層ビル群とその手前の公園の木々をボーッと眺めながら、煙をブハーッと無遠慮に吐く。

 あまり調子に乗って勢いよく吸い過ぎたので、少しむせてしまった。
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657:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:43:15.38 ID:vQzT5qlo0
「あぁ――ちょうど今、行こうかなと思ってた」
「いやいや、蕎麦屋の出前じゃないんだから」

 ケラケラと、塩見さんがからかうように笑う。

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658:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:45:56.83 ID:vQzT5qlo0
「何も、気の利いた説教を聞きたいワケじゃないよ」

 城ヶ崎さんが声をかけた。

 いつか、俺が彼女に言った言葉に似ている――言う人間が違うだけで、こんなにも優しく聞こえるものなんだな。
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659:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:49:12.36 ID:vQzT5qlo0
 煙を吐きながら、俺はチラッと彼女達の顔色を伺った。

 特に速水さんは、またヘソを曲げるかと思ったが――どうやら、今日の彼女は冷静だ。

 それに、城ヶ崎さんも――彼女は、どこか感情を抑えるようにして、唇をキュッとつぐんでいる。
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660:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:51:03.56 ID:vQzT5qlo0
「むしろ、そう。アイドルでいる間より、アイドルを辞めた後の人生の方が、遙かに長いんだ」

「アイドルを引退した後、君達は、もしかしたら誰かのお嫁さんになっているかも知れないし、どこかのOLになっているかもしれない。
 あるいは、芸能関係者になっているか、まかり間違ってプロデューサーになるのか」

以下略



661:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:54:33.00 ID:vQzT5qlo0
「――――」



 タバコの灰が、ポトリと靴の上に落ちて、慌てて蹴っ飛ばした。
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662:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:57:10.74 ID:vQzT5qlo0
「えっ、あ――」

 グスッ、と鼻を啜る音がしたので、ふと見ると、なぜか城ヶ崎さんが目に涙を溜めていた。


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663:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:59:45.76 ID:vQzT5qlo0
 ようやく落ち着きを取り戻した城ヶ崎さんは、目尻に溜まった涙を指で拭う。

「もう、せっかく時間かけてメイクキメたのに、またやり直しじゃん」

 呆れるように笑いながら彼女は言うが、呆れてるのはこっちだ。俺のせいかよ。
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