過去ログ - LiPPS「MEGALOUNIT」
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656:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:40:54.02 ID:vQzT5qlo0
誰も通らない通路の手すりにもたれかかり、ようやくタバコに火を付けた。
遠くに見える高層ビル群とその手前の公園の木々をボーッと眺めながら、煙をブハーッと無遠慮に吐く。
あまり調子に乗って勢いよく吸い過ぎたので、少しむせてしまった。
657:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:43:15.38 ID:vQzT5qlo0
「あぁ――ちょうど今、行こうかなと思ってた」
「いやいや、蕎麦屋の出前じゃないんだから」
ケラケラと、塩見さんがからかうように笑う。
658:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:45:56.83 ID:vQzT5qlo0
「何も、気の利いた説教を聞きたいワケじゃないよ」
城ヶ崎さんが声をかけた。
いつか、俺が彼女に言った言葉に似ている――言う人間が違うだけで、こんなにも優しく聞こえるものなんだな。
659:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:49:12.36 ID:vQzT5qlo0
煙を吐きながら、俺はチラッと彼女達の顔色を伺った。
特に速水さんは、またヘソを曲げるかと思ったが――どうやら、今日の彼女は冷静だ。
それに、城ヶ崎さんも――彼女は、どこか感情を抑えるようにして、唇をキュッとつぐんでいる。
660:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:51:03.56 ID:vQzT5qlo0
「むしろ、そう。アイドルでいる間より、アイドルを辞めた後の人生の方が、遙かに長いんだ」
「アイドルを引退した後、君達は、もしかしたら誰かのお嫁さんになっているかも知れないし、どこかのOLになっているかもしれない。
あるいは、芸能関係者になっているか、まかり間違ってプロデューサーになるのか」
661:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:54:33.00 ID:vQzT5qlo0
「――――」
タバコの灰が、ポトリと靴の上に落ちて、慌てて蹴っ飛ばした。
662:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:57:10.74 ID:vQzT5qlo0
「えっ、あ――」
グスッ、と鼻を啜る音がしたので、ふと見ると、なぜか城ヶ崎さんが目に涙を溜めていた。
663:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 21:59:45.76 ID:vQzT5qlo0
ようやく落ち着きを取り戻した城ヶ崎さんは、目尻に溜まった涙を指で拭う。
「もう、せっかく時間かけてメイクキメたのに、またやり直しじゃん」
呆れるように笑いながら彼女は言うが、呆れてるのはこっちだ。俺のせいかよ。
664:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 22:01:35.61 ID:vQzT5qlo0
「おかしな事を、か――」
否定も肯定もしないが、俺には君達にこう言うより他に仕方が無い。
言っても無駄か――確かに、夢に燃える10代の女の子達に、消化試合しか残されていないおっさんの説教など、ナンセンスかもな。
665:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 22:03:55.89 ID:vQzT5qlo0
塩見さんのお察しの通り、187プロの仕業と見て間違いないだろう。
常務め、何が心配は要らないだ。危うくステージが台無しになるところだ。だから言ったのに――。
「ありがとう。俺が責任持ってスタッフに渡しておくよ」
666:名無しNIPPER[saga]
2017/12/22(金) 22:05:37.88 ID:vQzT5qlo0
訝しげにそれを見つめる俺に塩見さんが声をかけ、俺はようやく顔を上げた。
「あ、あぁ――あ、最後に」
そういえば、一つ言い忘れていた事があったのを思い出した。
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