4: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:12:55.55 ID:Li1QhE+X0
「ナツ……?」
聞かされた名前を無意識に呟いた。
状況が飲み込めない。
ナツと呼ばれても全く反応を示さない少女。
5: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:21:11.57 ID:Li1QhE+X0
「母さん」
父が母に何か合図する。
母は頷いて、私から離れた。
6: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:30:37.98 ID:Li1QhE+X0
「ナツ、身長高いね」
私は立ち上がろうと、車いすから足を降ろした。
「よっと」
7: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 10:04:02.04 ID:Li1QhE+X0
「そうですか」
ナツが呟くかたわらで、私は先ほど読んでいた資料を思い出す。
あれは、診療所の倉庫にあったもので、ヒマだったのでこっそりと拝借したものだ。
子どものいなくなった村に、よそから身寄りのない子どもを引き取って村を存続させたとも書いてあった。
8: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 10:28:27.97 ID:Li1QhE+X0
診療所の前の道路は、太い木の根がアスファルトを突き破っていた。
生い茂る大木の木の葉が、二人の上に影をつくる。
なんとかまたいで、ナツにしがみつくように歩いた。
目覚めてからすぐにリハビリをしたおかげか、支えがあれば歩くのにそこまで支障はない。
桟橋にはすぐに着いた。大きな池に設置されたそれは、今や誰も使っていないのが一目で分かる程古びてボロボロになっていた。
9: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 10:48:46.60 ID:Li1QhE+X0
子どもが次々に死んでしまう奇病がついこの間まで流行っていたのに、どうして村に来れたのだろう。
もともといた所から離れて寂しくないのか。
一人は寂しくないのか。
私は、もしかしたら、一人でも大丈夫だという確信をナツに見出そうとしているのかもしれない。
10: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:18:38.47 ID:Li1QhE+X0
「こんなことを聞いても、なんの慰めにもならないでしょうに」
ナツは鼻で笑った。
「それとも、自分よりも可哀相な人間を見ると落ち着きますか?」
11: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:36:38.98 ID:Li1QhE+X0
その後、何も言い返すことができず、また診療所に戻った。
そもそも、自分の常識が通じない相手なのかもしれない。
傷つくというか、カルチャーショックに近い。
「ナツ、家を案内しよう。ミソラは、しばらくは診療所生活が続くから、ナツはそれまでに家のことを覚えていこう」
12: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:42:50.61 ID:Li1QhE+X0
それから、1週間程が過ぎた。
私は漸く自分の足で走れるくらいにまで回復していた。
ガリガリだった体も肉付いてきて、逆に太りすぎていないかと気になるくらいだった。
「今日まで、リハビリをさぼらずに頑張った成果ですね。頑張りましたね」
13: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 11:46:59.59 ID:Li1QhE+X0
「ミソラ、歩けるようになったんですね」
「そうなの、それに、もう走れるんだよ」
と、車の周りを2周くらいして、運転席の横で足がからんでしまいずっこける。
14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 12:02:48.44 ID:Li1QhE+X0
家に戻って、夜は退院のお祝いということで豪勢な夕飯だった。
半分はナツが作ったというから驚きだ。
ナツは、両親の前では普通に笑って普通に会話していた。
1週間前に話したナツとはまるで別人で、もしかして何か心変わりしたのかと思った。
それが勘違いだと気付くのに時間は要さなかったけれど。
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