14: ◆ao.kz0hS/Q[saga]
2017/02/25(土) 22:03:48.01 ID:CYpm3u/s0
「夏樹ちゃん…? 喉、どうしたの…?」
手を乱暴に払いのけられたPは、それでもアタシに心配そうな目を向けてきている。
でもアタシの喉が潰れているなんてことは今は全然重要じゃないから、Pの疑問に答えることはしない。
「な゛ぁ…いつ…から…なんだ…?」
「え? なに? なんの話…?」
「いつからな゛んだよぉ゛…?」
「えぇぇ…な、夏樹ちゃん…一体どうしたの…?」
要領を得ないPに苛立ち、アタシはこれまでの仕事を早送りで思い返した。
Pと出会い、だりーと出会い、レッスンと失敗の日々があって、ゴキゲンな楽曲を作り出して、小さなハコなら満員にできるくらいになって…。
「……ま゛さか…」
音楽やってる誰もが夢見る夏のフェス…。アタシらの仕事の質が決定的に変わったのはそれに出てからだった…。その出演者の枠に入れたのは幸運と…実力だと思っていて…それはアタシの誇りだったんだが…。
「なぁ…ま゛さか…あ゛のフェス゛から…なのか…? あの時から…アンタは……あんなことを……?」
Pの瞳を真っすぐに見つめた。そのときのアタシは縋るような懇願するような表情だったと思う。どうかそれは違っていてくれと祈っていた。
「ぇ………いや………なつき…ちゃん…?」
Pの顔が…きょとんとしているだけだったPの表情が…強張っていた…。
まるで、何か思い当たる節があるっていうか、聞かれたくないことを聞かれてしまったっていうような…そんな顔…。
それだけでもう十分すぎるぐらいの答えたっだ。
「な…なんの…こと…? 夏樹ちゃん…?」
作り笑いを浮かべてシラを切るつもりらしいPを今度はしっかりと睨みつけ、言い放つ。
「い゛つからあ゛の社長と寝てるのかって話だよっ!!」
「っ!!??」
Pの顔が見る見るうちに青くなっていく。目は泳いで、唇はフルフルと震えて、肩をブルブル震わせて、ただでさえ小さいのに余計に小さく見える。
「ど………どうして…知ってる…の?」
「ン゛な゛ことはどうでもいいだろうがぁぁっ!!!」
「うわぁっ!?」
Pのふざけた言葉に耐えかねて胸倉に掴みかかると、Pは足をもつれさせ後ろに転び、アタシはそのままPの腹に馬乗りになった。
「はぁ゛〜〜はぁ゛〜〜ふ、ふざけんな゛…よ…オマエ…ふざけんな゛よ゛…っ!」
「ぅ…いつつ……」
アタシは胸倉を放さず、鼻先が擦れそうなくらいの至近距離でPの両目を睨みつける。
アタシとだりーが掴んできた成功が端から端から穢れていく…。
アタシとだりーの立っていたステージがどす黒い沼地だったことに戦慄する…。
築いてきたプライドがズタボロに崩されていく…。
「オマエ゛……な゛にやって゛んだよぉぉっ!!」
「ぅっ…な、つきちゃん……っ!」
これまでの人生、まぁ言う程長く生きてもないが、こんなにも憎しみを持って人を見たことはなかった…。
憎しみ…こりゃあ最悪の感情だ…。身体はワナワナ震えるし、動悸はしてくるし、気を抜いたら狂って叫んじまいそうになる。
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