19: ◆ao.kz0hS/Q[saga]
2017/02/25(土) 22:12:10.69 ID:CYpm3u/s0
「ぅ……ぅぅぅ…ぅぅぅ〜〜〜〜〜ぐす……っ」
出すものを出し終わり、Pのピストルがデリンジャーになった頃、Pは股間をまる出しにしたまま両手で顔を覆ってさめざめと泣き始める。
「はっ………情けないヤツ」
「うぅぅ…っ! ……ふぐっ! ……ひっく!」
Pのワイシャツに手の汚れを擦り付けると、Pは何をされたのかわかったらしく、泣き声を大きくした。
静かな事務所にPのすすり泣きだけがさめざめと響く。
アタシを駆り立てていた激しい衝動は急激に冷え込んで、その反動からか重く深い倦怠感と、我を失ってしまっていた自分自身への嫌悪感を覚え、自然とため息が漏れた。
「はぁ〜〜〜………死にたい………」
「ふぇ…?」
耳ざとくそれを聞いていたらしいPが気の抜けた声を出し、情けない顔をさらに歪めていく。
「ぁぁ…夏樹ちゃん…そんなこと…死ぬだなんて…ふぐっ……言わないでぇぇぇ…っ! だめぇぇ! 死んだらお終いだよぉぉ…っ!」
「うわっ!? こ、こらっ、離れろ…っ!」
「ボクのことが気持ち悪いなら…うぅぅっ! ひっく……べ、別のプロダクションに移籍できるようにするから…っ! だから…死なないでぇぇぇ〜〜〜っ」
「はぁぁ!? 死ぬわけないだ…ろっ!」
「んあぁっ!?」
急にゾンビみたいに這いつくばりながら縋りついてきたPにビビッて、慌ててデコを押して引き離す。
「本気なわけないだろ……はぁ……アンタ、いつまで丸出しにしてるんだよ…」
「あっ! あぅ…恥ずかしい……」
ヨタヨタと立ち上がりトランクスとスラックスを穿き直すP。
「ぅぅ…濡れてて気持ち悪いよぉ……」
そんなこと知るか。そう胸の中でツッコむとまた一段とダルさが増したような気がした。
「………バカバカしい」
こんなナヨナヨしたヤツのことで、これ以上悩むのが馬鹿らしくなってきた。
ついでにあの豚のことももう思い出したくない。
かといって別のプロダクションへ行って心機一転やり直すという気にはなれそうにない。
それに手段はどうあれ、スターへの道が朧気にも見えている今の環境のことを思い返すと……ロックの欠片もない現実的な判断を下してしまう自分に嫌気が差す。
吐きまくって、怒鳴り散らして、Pをイジメた挙句、結局アタシが選ぶのは現状維持だった…。
もし…。
もしも、だりーだったならどんな選択をするのだろうかという考えが頭をよぎった。
ひょっとするとだりーならこんなクソッタレな現実を前にしても、アタシには思いもつかない真っすぐで、強くて、ロックな道を選ぶんじゃないか…? と、そこまで考えて妄想を振り払う。
いくらなんでもだりーにはこんな汚いモノ見せたくない。
「事務所は辞めない…アンタも…好きにしな」
「え…夏樹…ちゃん…?」
「これまで通りよろしくってことさ…。はは…カッコ悪くて死にたくなるな…」
「ぁ、夏樹ちゃん…っ!」
Pが呼ぶのにも構わず事務所のドアへ向かい、外へ出る。
外の寒さはさっきよりも厳しくなっているように感じられた。
だりーはもう寝ている頃だろうか…?
早く明日が来てほしい…。
無性にだりーに会いたかった。
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