4: ◆ao.kz0hS/Q[saga]
2017/02/25(土) 21:49:47.70 ID:CYpm3u/s0
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ぎゅいーーーん、と最後に愛器をかき鳴らしたタイミングで白色の照明はOFFられて、足元を照らすブルーとパープルの光だけが残った。
演奏も歌もばっちり。ライブ演出もリハ通り。
ただ一つのマイナス点は、アタシの相棒がステージが暗転してからずっとこっちに視線を送ってきていること。
おいおい、違うだろ?
カメラが切り替わるまではじっとしてなきゃ、カッコつかないぜ?
相棒がどんな表情をしてるかは見なくても想像がついた。きっと、目をキラキラ輝かせて満面の笑みに決まってる。
無理もないか! 誰でも知ってるゴールデンタイムの音楽番組に出演できたんだから!
しかも完璧なパフォーマンスで演れたんだからな!
かく言うアタシも顔がニヤケそうになるのを抑えるのがやっとだ。
笑いを堪えられなくなる一瞬前、やっとスタジオの隅からOKのサインが出て、それとほぼ同時に胸にドスンと衝撃が走った。
「なつきち〜〜〜!うわぁ〜〜〜ん!」
相棒、だりーこと多田李衣菜がアタシの胸にダイブを決め、ギターごと抱きしめられちまった。
「ははっ、イイ音だったぜ、だりー!」
「なつきち〜〜!やったよぉ〜〜!うわぁ〜〜ん!」
「おいおい、まだ収録は残ってるんだから…な、泣くなって…」
少し前から急に仕事が増えてきたとはいえ、まだまだ駆け出しのアタシたちにとってはこの番組はかなりの大舞台だった。それを無事成功させた安堵からか、だりーはみっともなく流れる涙を止めようともしない。
清々しいぐらいのその真っすぐさに危うくアタシまでもらい泣きしそうになり、慌てて天井を見上げる。
数回の瞬きで目の潤みを紛らわせてから客席を見渡せば、今度は一曲のためだけに観覧しに来てくれたコアなファンたちの優しい視線に気付いちまって、もう諦めた。
いつまでもこのステージに立っていたいのは山々だが、また雛壇に戻って画面の奥から存在感をアピールするという仕事が残っている。
「最高だぜ! サンキューな!!」
アタシたちを取り囲むすべてに対しての感謝を叫んでから、だりーを引きずる様にして元のスタジオへ戻った。
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