55: ◆ao.kz0hS/Q[saga]
2017/02/25(土) 23:06:13.91 ID:CYpm3u/s0
でも何故か救われた気分になっていて、絶妙な匙加減を発揮してくれたPに心の中で深く頭を下げた。
「夏樹ちゃんってさ、結構カッコ悪いよね」
「ははっ……。だりーにも言われたよ…。そうだな…確かに最近のアタシはとんでもなくカッコ悪かったな…」
昨日までのアタシだったらPにけなされたとしたら烈火のごとく怒り狂っただろうに、今はもう素直に受け止めることが出来た。
「え? 何言ってるの? 初めて会ったときからカッコ悪かったじゃない」
「は……?」
Pは悪戯っぽい笑みを浮かべながら続けた。
「ロック一本じゃスターになるのが無理だったから、アイドルをやるっていうのがまずカッコ悪いでしょ?
それにレッスンを要領よく終わらせてると見せかけて裏で必死に自主練してるのもカッコ悪いし。
それに一番カッコ悪いのが、李衣菜ちゃんの前では特にカッコつけたがるところっ! ふふっ!
李衣菜ちゃんに頼られたい、尊敬されていたいって思ってるのが丸わかりだよ? あとそれにね…っ」
「あっ、あっ、あっ! そ、それくらいにしといてくんないかな…っ!」
自分としては巧くやれているつもりだったのに、痛いところを突かれてどんどん顔が熱くなっていく。
きっともう茹で蛸状態だろう。
「でも…ボクは夏樹ちゃんのそういうところに憧れたんだ…」
「へ…?」
「人知れずあがいて、もがいて上を目指して、カッコつけるところ…カッコ悪いけど、でもやっぱり最高にロックでカッコいいっ!
ボクはカッコをつけることさえできない人間だから、そんなボクにとって夏樹ちゃんは…本当にアイドルなんだっ!
その夏樹ちゃんの役に立てるなら、ボクはどんなことだって出来る…っ」
「……はっ……それで枕やってりゃ世話ねぇよ……」
「ぁ、ぅ……っ」
「いや…、もうアンタの信念には口は出さない。思うままにやんな…。アタシはアタシでこれまで通り泥臭くカッコつけて…アンタに汚れ損だなんて思わせないようにするから…」
「夏樹ちゃん…」
「でも…アンタばっかりが汚れるのをただ見てるのはやっぱりフェアじゃない…アタシにも何かできることないか…?」
「それはだめ…。そんなの、ボクがしてる意味がなくなっちゃう。それにね…」
言いながらPは頬が引き攣るくらいに口角を上げていた。
「○○社長はもうしばらくすればいなくなってもらうから、その必要もないよ……ふふっ♪」
「は? え…?」
無邪気どころか、邪悪にしか見えないPの笑顔…それは間違いなく初めて見るものだ。
それでもアタシはその得体のしれない微笑に、不思議と頼もしさを感じてしまっていた。
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