7: ◆ao.kz0hS/Q[saga]
2017/02/25(土) 21:55:25.26 ID:CYpm3u/s0
二人は明らかに初対面ではないのに、Pさんはこれ以上ないくらいに狼狽しているように見えた。でもアタシは呑気に、どうしても苦手な相手ってのはいるからなぁ、だなんて考えていた。なんか、その、見た感じちょっとアレな人だしな…。
「あぁ〜♪ この子たちがPくんのアイドルかぁ〜♪」
「あ、はい…。こちら木村夏樹と多田李衣菜です…」
紹介されてしまったので、アタシとだりーは簡単に自己紹介をした。
そしてPさんが大男の紹介をする。
「こちらはね…○○社長。この番組のスポンサーでもある〇〇会社の社長でいらっしゃる方だよ」
○○会社といえば元はベンチャー発祥で急成長した会社だったか。
最近ゴールデンタイムにCMを打っているのをよく見かける。アタシらみたいな零細プロダクションもあれば、こんな景気の良いところもあるのかと呆れたものだ。
「うわっ、すごっ! Pさんそんな偉い人とトモダチなんだっ!」
「トモダチって…だりーおまえな…」
「トモダチ、ねぇ……んふふ♪ そうなんだよぉ♪ ワタシとPくんはトモダチなんだ♪ それもとってもナカのイイ…ね♪」
「っ……」
シャチョーさんは言いながら今度はPさんの肩と背中を撫で回していた。
仲が良いのは結構だが…正直イロイロとキツイ光景だった。いやまぁ、トモダチってんならこれくらい普通なのかもしれないけど…?
「へぇ〜〜♪ ほぉ〜〜♪ この子たちがねぇ〜〜♪ へぇ〜〜♪」
腫れぼったい瞼の下のくすんだ光がアタシとだりーを見据える。
それは遠慮って言葉知らないのかって問い詰めたくなるような粘ついた視線で、背後のだりーが極微かな悲鳴を漏らしたほどだった。
あぁ…わかった…。アタシ、コイツ駄目だ。
値踏みする視線ってのはこれまで何度も浴びてきたが、コイツのはぶっちぎりで不快だった。
人を商品として、いや、金になるかどうかでしか見ていないのを隠そうともしない失礼さ…。
「ふ〜ん♪ まぁいいや♪ 二人ともPくんによぉ〜〜く感謝するんだよぉ♪」
「あ?」
「○○社長…それは…っ」
「うんうん、分かってるって♪」
Pさんにはもちろんいつだって感謝している。テメエに言われるまでもなくな。
コイツは人を苛立たせる才能でもあるんだろうか…。
危うくガンを付けてしまいそうになったが、なんとかそれは抑えられたはずだ。…たぶん。
そういえば、だらしない腹が動くたびに、口から空気の抜ける間抜けな音が鳴って……その毎二秒後に鼻が獣臭さを捉えて……ゲェ〜〜そういうことかよ〜〜!
そこまで気付いてしまうと、後はもうひたすらに気持ち悪く、今にも肺が腐ってきそうな気分だった。
それはだりーも同じだったようで鼻をしきりに擦りながら完全に委縮して、怯える小動物みたいになっていた。
「あー……アタシらはそろそろ楽屋に…」
「うん…そうだね…。二人はもう着替えに行っておいで。ボクは○○社長と…う、打ち合わせがあるから…。二人は先に帰っておいてくれたらいいから…」
そう言ったPさんを残して、アタシとだりーはありがたく楽屋へ下がらせてもらうことにした。
シャチョーさんはPさんの肩に手を回したまま、スタジオのセットの裏の方へ向かっていくように見えた。隅っこでちょっと打ち合わせするだけなのかな?
それにしてもプロデューサーってのはあーいう人間とも仲良くしないとダメなんだな。
ったく、Pさんには頭上がんねーぜ。
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