【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:23:50.87 ID:u1xI7N2CO
 ようやく兎角が晴と会えたのはさらにその翌日の六日目、月曜日の教室でのことであった。

 この日も兎角は朝から晴を探してから教室に来たがその時はまだ晴も柩も来ていなかった。
 今日もまた会えないのかと半ば諦めながら席についていた兎角であったが、授業が始まろうかという頃急に扉が開いて二つの人影が入ってきた。
 兎角は思わず立ち上がった。その人影こそが晴と柩だったからだ。

 うつむきながら入ってくる二人に声をかけようとした兎角であったがその声はもっと大きな声によって遮られた。

「やあ皆。おはよう!今日は久しぶりに全員が揃ったな!」

 朗らかな声と共に入ってきたのは担任の溝呂木で、そして彼が入ってくると同時に授業開始のチャイムがなった。

「じゃあ皆、席につけー!」

 完全にタイミングを逃した兎角は座るしかなく、そして座ると同時に晴達の意図が読めた。
 恐らく晴達は授業開始とほぼ同時に教室に入れるように廊下で入るタイミングを狙っていたのだろう。もしかしたら溝呂木と会話して調節などもしていたかもしれない。
 理由は?それは一つしかないだろう。恐らく晴達は兎角や千足とまだ話したくないのだ。しかし休日を挟んで四日以上授業を休むのはさすがに無理だった。授業に出つつ会話の機会を与えない。そこから生まれたのが今回の一手だったのだろう。

 兎角は一つ大きなため息をついた。安堵と痛みと気を引き締めるためのため息である。
 安堵とは晴が無事だったことに対するものだ。ここ数日、無いとはわかりつつもつい最悪の想像をしてしまうことは一度や二度ではなかった。しかし実際には人前に出れる程度には晴は無事であった、その事に対する安堵。
 痛みとはまだ自分が許されてはいないということを自覚した痛み。もちろん簡単に許されるなどとは思っていない。しかしながら改めて拒絶の意を示されると覚悟はしていても胸が締め付けられるように痛んだ。
 だからこそ兎角は気を引き締めようと思った。ここ数日兎角は反省し、そして改めて晴への思いを確認した。
 晴と別れたくない。手放したくない。そのためにはここが正念場である。
 どんな責め苦が待っていたとしても絶対に耐えて見せると兎角は改めて決心した。

 結局この日は兎角も千足も晴と柩に声をかけることはできなかった。授業中のメールはもちろん休み時間や授業が終わると二人はすぐに教室を出て会話の隙を与えてくれなかった。
 さらに二人共どこかに宿を調達したのか1号室にも4号室にも帰っては来なかった。
 冷たい態度は苦しかったが兎角も千足も今は仕方がないと思っていた。自分達も苦しいがそれ以上に苦しいのが彼女達だからと静かに待つことにした。

 次の日も、また次の日も晴達の態度は変わらなかった。


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