イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」
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893: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/10/09(月) 02:35:18.96 ID:T5P3BkAm0
…しばらくして・食堂…

アラジ「……ずいぶん遅かったね?」

アッチアイーオ「///」

提督「そうね、なにしろ髪が長いものだから♪」

…まだ余韻を残しているようなアッチアイーオが顔を赤くしてそっぽを向いたのに対して、にこやかに微笑みながらさらりと言い逃れをする提督……もちろん察しのいい一部の艦娘たちにそんなありきたりな嘘が通用するわけもないが、恥ずかしげなアッチアイーオのためについた言い訳であることを分かってほしいという含みを持たせた…

ドリア「そうですね、チェザーレも髪を乾かすとなると大騒ぎですし♪」口元を手で押さえてころころと笑いながら、髪にうるさいチェザーレを引き合いに出してからかった……

チェザーレ「む、それは致し方あるまいが……」

ディアナ「さあさあ、提督もお腹を透かしていらっしゃるのですから……まずは夕食にいたしましょう」

リベッチオ「賛成っ♪」

提督「そうね、お風呂に入ってさっぱりしたらお腹が空いてきたわ♪」

…すっかりクリスマスムードの食堂で楽しげにしている艦娘たちを眺めつつ、定位置に腰かけた提督……最初は遠慮していたが周囲にやいのやいの言われて横に座ったライモンが、グラスに白ワインを注いでくれる…

カヴール「では改めて……お帰りなさいませ、提督♪」

提督「ええ♪」

…ディアナは旅の疲れで食欲が出ないだろうと気を利かせてくれていて、テーブルには家庭的なミネストローネ、それと作り置きの野菜マリネや牛の生ハムスライスといった、さっぱり食べられるものが並んでいる…

ディアナ「いかがでございましょう?」

提督「ええ、とっても美味しいわ……♪」すっきりと飲み口のいいシチリアの白ワインをお供に、暖炉の火がかもし出す暖かな雰囲気の中で艦娘たちとゆったり食事をとる……

ライモン「もう少しいかがですか、提督?」

提督「ありがとう。ライモン、ところでワインをもう少しいかが?」

ライモン「ええ、それじゃあ半分ほど……///」

…食後…

提督「ふー、美味しかったわ……ディアナ、お皿洗いを手伝いましょうか?」

ディアナ「お帰りになったばかりの提督にそのようなお願いはいたしません……それより、あの娘たちに土産話でもしてあげて下さいませ」

提督「分かったわ。それじゃあお皿洗いは後にして、ディアナもいらっしゃいな♪」

ディアナ「まぁ……では、よしなに」

…暖炉のそばに引き寄せた椅子や暖炉の前に敷いてある大ぶりの絨毯には艦娘たちと、鎮守府の皆に可愛がられている純白の雑種犬「ルチア」が三々五々と集まり、椅子に座って火を眺めていたり、あるいは直接絨毯に座ったり寝そべったりしている……中の何人かはクリスマスシーズンということでつまみ食い自由にしてある「パンドーロ(黄金のパン)」といった伝統焼き菓子をつまんだり、果物やスパイスの入ったホットワインやキアンティを垂らしたコーヒーで暖まっている…

提督「よしよし♪」ルチアのふんわりと長い毛をブラシでくしけずりつつ、ときおり耳のあたりや尻尾の付け根をかいてあげる提督……

ルチア「ワフッ……♪」

デュイリオ「うふふっ♪ ルチアも提督がお戻りになって、安心したようですね♪」

…おっとりした妙齢のお姉さまである「カイオ・デュイリオ」は自分のペットであるカラスを肩に止まらせつつ揺り椅子に腰かけ、紅に金糸で模様をあしらった豪奢なガウン姿でちびちびとブランデーを舐めている……時折かたわらに置いてある小皿からクルミを取るとカラスに食べさせて、それから頭を撫でたり、羽根を整えてあげたりしている…

カラス「カー」丸い利口そうな目をくるくると動かし、それからデュイリオの頬にちょんと身体を寄せると頬ずりのような動きをした……

デュイリオ「まぁまぁ……それじゃあもう少しだけあげましょうね♪」

カルロ・ミラベロ「それで、提督のお眼鏡にかなうような綺麗なお姉さんはいた?」絨毯に寝そべり頬杖をついて、脚をぱたぱたと動かしている……

提督「もう、別に北欧へ遊びに行ったわけじゃないのよ?」

エウジェニオ「あら、そうなの? でも、出会いの一つや二つはあったでしょう?」

提督「それは、まあ……なかったとは言わないけれど♪」

ガリバルディ「やっぱりね……それで?」

提督「そうねぇ。例えばスウェーデンのラーセンっていう大佐なんかはとっても綺麗な人で……まるでグレタ・ガルボみたいで、惚れ惚れするような美しさだったわ♪」

エウジェニオ「そう。ところで提督が大事そうに部屋へ持って行った贈り物のナイフ……あれの送り主のフィンランド人とはずいぶん仲良くなったみたいだけれど、その話はしないの?」

提督「……どうしてあの贈り物がナイフだって分かったの」

エウジェニオ「ふふ、私の目をごまかそうとしてもそうは行かないわ♪ まず、あの箱の様子だと中身は長細いものでしょうし、かといってペンにしては大きすぎる……これといったロゴやブランド名もないから、送り主の手作りかそれに近い素朴な何か……で、今回の出張先はフィンランドでしょ」

提督「え、ええ……」

エウジェニオ「フィンランドと言えばフィンランド・ナイフ(プーッコ)が有名だし、あの飾り気のなさはスウェーデン人よりは質素倹約を重んじるフィンランド人からのプレゼントにふさわしい……ってところね。どう?」

提督「……エウジェニオにはかなわないわね」


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