10:名無しNIPPER[saga]
2018/12/01(土) 14:27:07.86 ID:3QcdtyFE0
◇
威張れるほどの人生を歩んできたわけではないのだが、俺だって色々な経験をしてきた大人なつもりだ。朝の事をいつまでも引きずっているわけにもいかない。
朝の恐怖体験は、昼、そして夕方にかけて事務仕事をこなしているうちに、偶然が重なりあっただけだということで落ち着きを見せ始めていた。
「あら、プロデューサーさん。今日は随分と調子がいいんですね」
などと、同じように事務仕事をこなすちひろさんからからかわれる。つまり、それほどまでに熱心に書類と向き合っていたということだろう。熱心というよりは、何か他の事に脳のキャパシティを遣わなければやっていられなかったのだが、今日の事を笑い話にすることもまだできず「ありがとうございます」と苦笑で返事をした。
そうこうしているうちに時間は過ぎて、テレビ局にいるまゆを迎えに行く時間になる。今日は、確か新しいCDのレコーディングがあったはずだ。直接向かうと昨日聞いていたので、まだ今日はまゆとは会っていない。昨日の時点では朝も送っていこうかと思っていたのだが、朝の時点ではまゆと会いたくなかったのだ。
「それじゃ、まゆを寮まで送りますので一旦失礼します」
ちひろさんにそう挨拶をすると、彼女は不思議そうにこちらを見つめた。
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