高垣楓「れんそうげえむ」
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3:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:15:39.25 ID:ThdkkE4u0
「…………」
「……あの」
「なんでしょう?」
「その、脇に立たれると気になるって言いますか」
「なるほど。じゃあこちらに」
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:16:19.23 ID:ThdkkE4u0
 さあ、考える時間だ。議題は「あれとはなにか」。
 昨日、一昨日あたりの記憶を重点的に洗って、それでも引っかかるものがなかったのでここ一か月くらいの範囲を精査した結果、俺が導き出した答えは。

「………………………………すいません楓さん、なんの話か教えてもらっても?」
「いつか、ご飯をご一緒しようという話になったので」
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:29:55.20 ID:ThdkkE4u0
「良かった。今週末には予定がないので、それを伝えておきたかったんです」
「分かりました。セッティングしておきますね」
「…………」
「……あの、まだ何か?」

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:42:00.60 ID:ThdkkE4u0

 顔、名前、公称プロフィールの諸々、あとはちょっとした趣味とか。これくらいはファンなら自ずと頭に入ることなので、そこと一線を画そうと思えば、自宅の住所を知っていることを挙げるだろうか。
 総評して、一般的なファンより多少詳しい、的な場所に落ち着くような気がする。

「それなりですか」
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:51:58.67 ID:ThdkkE4u0
 言われてみれば、そうなのかもしれない。彼女の魅力を限度いっぱいまで引き出すことを考えた時、まず第一に、俺が売りだすべきストロングポイントを熟知していなければならない。
 まあ、俺が小賢しい手を講じるまでもなく、楓さんは勝手に一人で売れていってしまう気がしないでもないが。馬子にも衣裳なんて言うけれど、わざわざ白鳥にドレスを仕立てるのは下策に思える。楓さんの素のきらびやかさを思えばなおさら。

「なので、今後はもっと私への関心を深めるようにお願いしますね」
「善処します」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:52:45.63 ID:ThdkkE4u0
 詰め寄られて、少しのけ反る。あんまり近いものだから、色の違う両の瞳に吸い込まれてしまいそうで腰のあたりが落ち着かない。

「週末、楽しみにしてますから」

 そう言って、楓さんはようやくのこと俺のデスクから離れてくれた。ちひろさんの視線が気になるので、そちらを見ないようにして仕事を再開しないと。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:53:21.75 ID:ThdkkE4u0
「ワインも捨てがたいですが、やはり日本酒ですね」
 
 楚々とした所作でお猪口を傾けた後の一言。来店からそれなりの時間が経過したので、楓さんの頬はほんのり赤く色づいている。
 しかし、相変わらず何をやっても絵になる女性だ。時代が時代なら、この美貌だけで国の一つや二つ陥落させていたのではないか。前もってハニートラップである旨を告げても、その上で喜び勇んで引っかかる人間はそこそこの数に上るはず。
 俺だって、仕事で関係のある人でなければまず真っ先に美人局の可能性を疑った。実際、周りの客からはそう見えている可能性もある。


10:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 22:53:48.09 ID:ThdkkE4u0
「一献いかがですか?」
「喜んで」

 ファンが見たら怒り狂う光景かもしれない。『高垣楓にお酌してもらう権利』なんて、どんな人生を歩めば手に入るのだろうか。
 事実、彼女と何度か食事をするたびに、運命の数奇さのようなものを感じずにはいられなかった。役得と断じてしまうのは簡単で、しかしその根っこは意外と深い。要は運が良かったのだ、俺は。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 23:06:10.31 ID:ThdkkE4u0
「プロデューサー?」
「なんです?」
「心ここにあらずといった様子だったので。酔っちゃいましたか?」

 なぜか楓さんは唇の前で人差し指を交差させてばってんを作っている。「お酒はもうダメですか?」という意味だろうか。首をこてんと傾ける仕草が年不相応にかわいらしくて見惚れかけるが、また言葉を失ったら本格的に泥酔を疑われてしまう。それは芳しくない。人並みに欲があるので、もう少しこの時間を楽しんでいたい。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2018/12/10(月) 23:07:11.23 ID:ThdkkE4u0
 先ほどの人差し指をとんとんと二回叩いた楓さん。気分としては、悪戯を叱られた子供のようだ。
 しかし、普段のミステリアスさが徐々に溶かされているからお酒というものは末恐ろしい。割と茶目っ気がある人なのは知っているが、こうも行動が変わるのだから。

「プロデューサー、あれ、頼んじゃいましょうか」
「……この間話していた銘柄?」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2018/12/10(月) 23:08:48.97 ID:ThdkkE4u0
「この感じです」
「と言うと?」
「詳細を話さずとも伝わる感覚とでも言いますか」

 指示語の内容を問わずとも理解できる状態を言うのだろうか。前後文脈から彼女の性格嗜好を考慮して、『あれ』にあたるものを特定する感じ。これはまた、なんともハイコンテクストな……。


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