15:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 01:21:46.45 ID:PhxU7pY/0
室内にいると窓の外の変遷に疎くなってしまうようで、見ればとっぷり日が暮れていた。イマイチしっくり来ない位置に収まった鞄を身をよじってちょうどいいポジションに寄せ、重たい脚をとぼとぼと前に進めだす。一応後ろを確認してみるが当たり前にそこは無人で、後ろを尾けられているという事態はなさそうだった。
念のために周囲を更に複数回検分するが、やっぱり人の気配はしない。肺にこもった重たい感情を呼気として吐き出してから、取り出したケータイでリダイヤルした。
「なぜここまで手の込んだことを……」
『なんとなくかな?』
16:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 01:22:14.69 ID:PhxU7pY/0
電子音に変換された肉声はどうにも無感情に聞こえて、何かに怯えたように腕に鳥肌が浮かび上がった。女優見習いの面目躍如、だろうか。
「一花」
『なに?』
「二人で話したいことってなんだよ」
17:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 01:22:43.51 ID:PhxU7pY/0
「だけど、いくら何でも姉妹騙くらかしてまで時間作ることはないだろ」
実のところ、一花の欠席には予め断りがあった。今日の勉強会には参加できないと、放課後になってすぐ俺に連絡が届いていたのだ。
……だがまあ、問題はその後で。
18:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 01:23:18.50 ID:PhxU7pY/0
「仕事が長引く設定にしたって、それを最初に言っておけばもう少し……」
『いやいや、今まで夜になっても帰れないなんてことはなかったからいきなりだと疑われちゃうよ。焦らして焦らして最後に伝えるからリアリティが生まれるんじゃない』
「その頭をもっと別の場所で使って欲しいよ俺は……」
『あ、良いんだ。そんなこと言ってるとこの前三玖とフータロー君がいちゃいちゃしてた時の写真、他のみんなに送っちゃうよ?』
「正直すまんかった」
19:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 01:23:54.12 ID:PhxU7pY/0
「……で、結局お前は俺をどうしたいんだよ」
『どうもしないって。でもまああの子たちのお姉ちゃんとして思うところがないわけでもないから、一回会って話したいな』
「いつ?」
『これから』
「どこで?」
20:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 01:25:10.15 ID:PhxU7pY/0
今晩はここまで。あと何千文字か書き溜めた分があるので、たぶん来夜にでも更新します。
21:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 22:06:59.62 ID:PhxU7pY/0
おそらく一花が指し示したのであろう店舗に近づくと、店と店の中間地点にあたる壁に背を預けてスマホをいじっている彼女の姿が目に入った。どう話しかけたものかと少し悩む間に向こうも俺の姿を視界に捉えたようで、によによ笑いながらこちらに手を振ってくる。
「早かったね」
「普通だろ」
「写真は本当に撮ってないから安心してね。わざわざ身内の爆弾を作る趣味なんてないし」
22:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 22:07:33.95 ID:PhxU7pY/0
「でも、すごいびっくりしちゃったなあ。まさかあんな……ねえ?」
「……何だよ」
「いや、合意の上ならこっちからは何も言えないけどさ。……でも、場所くらいは選んだ方が良いよってお話」
「…………」
23:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 22:08:21.01 ID:PhxU7pY/0
どんな話になろうとも、最終的に俺の肩身が狭くなるのは確定なのだ。先が思いやられるというか、考えただけで胃が痛むというか。そもそも罪は俺と三玖が同じだけ背負っているわけなのだから、俺だけが一方的に追いつめられるという構図はどうなんだろうか。釈然としない感はあって、そのあたりのすり合わせが自分の中でまるで上手く行かない。
「今日の勉強はちゃんと進んだ?」
「良くも悪くもいつも通りだ」
「そっか。なら置いていかれないようにしなくちゃね」
24:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 22:08:47.42 ID:PhxU7pY/0
とにかく、神経が磨り減る。今はどういう心境か会話が脇道に逸れているが、この際だからさっさと本題に移ってくれないだろうか。警戒しっぱなしのままでは、ただの雑談でさえ裏に意味がこもっているのではないかという猜疑心が尽きてくれない。この調子では心労でダウンしてしまいそうだ。
「もっと肩の力抜いていいのに」
「無茶言うな」
「そんなに後ろめたいならしなければ良かったんじゃないの?」
25:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/08(火) 22:09:16.57 ID:PhxU7pY/0
「私、人の感情の機微にはだいぶ敏感な方だと思ってたんだけど、あまりにも突然だったから」
「……?」
「最近付き合い始めたんだったら、すぐ分かるものだとばかり」
「…………」
「だから、いつそういう間柄になったのか、純粋に気になっちゃって」
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