60:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:31:29.08 ID:3bKI/3gF0
更に一花が小さくなった。自信とか尊厳とか、人が生き抜いていくうえで大切なものが根こそぎ破綻していっている感じだ。さっきまでとは別の意味で見ていられない。
「恥ずかし……」
「キスの巧拙とか人生においてそこまで重要じゃないだろ」
「でも、今後フータロー君はさ、私がみんなに対してお姉さんっぽい言動をするたび、『でもこいつはキス下手なんだな』って思うじゃない」
61:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:32:02.54 ID:3bKI/3gF0
俺の評価なんかで何が変わるとも思えないが、一花的に俺に舐められっぱなしなのは癇に障るらしい。まったくもって謎な価値観だが、この落ち込みようを見ると、彼女にとってはものすごく大事なことなのだろう。
「三玖と私が話してるところを見たフータロー君は、これから絶対考えるようになるんだよ?『あ、上手い奴と下手な奴だ』って」
「お前の中で俺がどんな認識を受けてるのか分からなくなってきた」
62:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:32:30.74 ID:3bKI/3gF0
「……フータロー君はさ、きっと上手なんだよね」
「え、そこに飛び火すんの?」
「三玖と上手なキスしたんでしょ? なら、私よりは絶対に上じゃない」
「……確かに歯は当たらないかもしれんが」
「ほら、そうやっていじめる。キスマウント取ってくる」
63:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:33:43.75 ID:3bKI/3gF0
「……ねえ、フータロー君」
「なんだよ」
「一つお願い聞いて」
「それで解決するならこの際聞いてやるよ……」
「…………やり直し」
64:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:34:12.65 ID:3bKI/3gF0
なんだか上手く流されてしまった気がするが、あんな面倒な状態の一花をこの先慰める手間を思えば、ちょっとちゅっとやって納得してもらった方が早いと自己完結してしまった。生憎というか幸運というか、同じ体のつくりをした連中で事前練習はばっちりなので、俺が上手いことリードしてやればすぐ終わる。俺もこんなことを考える人間になってしまったんだなぁと変わり果てた自分の姿に悲しくなるが、背に腹は代えられまい。
一花と目線を合わせるべくソファに両膝をついて、はーっと大きく息を吐く、大義のために短期的な犠牲は止むを得ないのだと必死に自分を説得しながら。
65:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:35:02.93 ID:3bKI/3gF0
「……とりあえず目を瞑れ」
「……ん」
「……高さの都合的に、ちょっと上向いて」
「……ん」
「……あとはもうちょい力抜け。またぶつかるぞ」
66:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:35:58.25 ID:3bKI/3gF0
「……じゃあぼちぼち行くから覚悟決めとけよ」
「…………ん」
さっき一度唇どうしがくっついているので、それに対しては抵抗感が少ない。守るものが少ないと、人は無敵になれるらしい。とにかくちゃちゃっとやって後は何事もなく帰ろう。それが俺のためだし、ゆくゆくはこいつらのためにもなると信じている。
67:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:37:53.66 ID:3bKI/3gF0
背に手を当てて、彼女の体をゆっくり引き寄せ、口づけた。その瞬間、一花が怯えるようにびくりと体を震わせたがそれは無視。いちいちそういうのに構っていては日が暮れてしまうというか、もう夜だから朝が来てしまう。
先ほど感じた仄かに香るオレンジは時間経過のせいか消え去っていて、そこにあるのは素で少し甘い唾液の味だけ。このなんとも言えない風味をまた感じることになってしまったのは遺憾としか言えないが、今後のことを考えるなら仕方ない。
一花は借りてきた猫のように大人しく、俺の舌の動きを緩慢になぞるだけだった。これではまるで俺が二乃に犯されたときの構図を逆転したようで、奇妙過ぎる因果に頭が痛くなってくる。
というかこれ、一花は下手くそなままじゃないのかという疑問は、そっと胸にしまい込んだ。そんなことを言っていたらもう一回、あと一回と無限にだらだらループしていくのが丸わかりだし、俺が保たない。正直今もかなり恥ずかしいのにこれ以上なんて勘弁被る。
自分が冷静であるからこそ、この行為の異常性は承知している。ここ最近色々あったせいで俺の中にある心理障壁がずいぶんしょぼくれたものになってしまった。人並みの貞操観念は持ち合わせていたはずだったのに。
68:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/09(水) 21:38:20.40 ID:3bKI/3gF0
それなりの時間唇を触れさせ合って、それなりの量唾液の交換を終えたと判断したので、ゆっくりと彼女から離れる。伝う唾液の橋は見て見ぬふりをすることにした。
「お、終わり……?」
「終わり」
69:名無しNIPPER[sage]
2019/01/10(木) 00:03:08.31 ID:odGkdFmYo
じらすねぇ!
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