R-18 安価とコンマでダンジョンタワー攻略 Part2
1- 20
146:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2019/04/30(火) 18:49:58.45 ID:Ro23D7sj0

「…ヒナトくん。やっぱり、私のこと許せない?」

頭を撫でながら、ふとそんなことを聞いてみる。

「―」

しばしの沈黙があって。

「―俺は」

ヒナトはクチナの胸に抱かれながら語り始める。

「…先輩が裏切ったことを、恨んでいるのは本心です。でもそれは神を侮辱したからとか…そんなんじゃない」

クチナとつないだ手にグッと力がこもる。



「怖かったんだ。俺の傍から貴方がいなくなったことが」



そう言う彼の声は震えていた。

「俺もここまで来るまで、教団の色んな面を見てきました。当然、あの『儀式』だって」

そう。

あの生贄の儀式はクチナの村だけで行われているわけではない。

あの村の他にも、様々な村や町があの神からの恩恵を受けながら豊かな暮らしを送っているのだ。

生贄と引き換えに。

クチナと離れ離れになり、その後神官としての任についたヒナトも彼女同様、どこかの村や街であの悍ましい儀式の数々を見てきたのだ。

「いつも…いつも夢に見るんです。供物として捧げられていく人々の姿が…あの笑顔が」

そう…彼らは笑うのだ。

自分の人生が最期を迎えようとしている時に、神の御許へと行くことができるのですと、穏やかに。

そんな『供物』たちの姿を見るたびに、ヒナトは恐怖を覚えていた。

「なんで…なんで笑っていられるんだ。あんな恐ろしいことが待ち受けているのに。ああ…悲鳴が…聞こえる…あのずるずるぐちゃぐちゃとした音が…ああ…!」

ぽたり、とクチナは胸元に熱い雫が落ちるのを感じていた。

「助けたかった。間違っているって言いたかった。でも…そんなことしたら、俺もクチナ先輩みたいに…他の人まで巻き込んで…」

教団の信奉する、村全体の幸福と引き換えに供物を要求する神。

その存在に逆らう者にはどんな神罰が降りかかるのか―敬愛するクチナ先輩は身をもってそれを示してしまった。

彼女の悲劇を目の当たりにしたヒナトには神の意志に逆らおうという選択肢など最初から無かったのだ。

そして彼は何もできないまま…供物となる人々を見送り続けた。

気弱で大人しい彼にとって地獄のような日々であったことは想像に難くない。

「そんな俺が、気付いたら教団の幹部さ」

自嘲と絶望の籠った言葉だった。

「幸せの為とか言って、口車に乗せて生贄にして。何が神官だ…神とかいう化け物にへつらう、ただのペテン師だ」

震える声からは怒りと絶望の感情が溢れんばかりに伝わってくる。

彼の告解を聞いていたクチナの手も震えていた。

かつて同じ境遇にいたクチナだからこそ、彼の苦悩は痛いほどに理解できてしまう。

「辛かった…よね。

―ううん、ヒナトくんにとっては…今も辛いんだよね」

恐らく今のヒナトが見ているものは、あの儀式だけではない。

幹部にまで出世したというからには、もしかしたらそれ以上の恐ろしい何かを見ているのかもしれない。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/793.17 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice