101:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/14(日) 00:19:15.90 ID:yy9rkK6R0
――そう説明しようとしたが、透子は急に険しい顔つきになって、目をさ迷わせ始めた。
「えっ……起きるの? また、あんなことが――――」
さっと影が落ちるように、透子の表情が硬く強張る。
と、次の瞬間、透子は何かに驚いたように目を見開き、窓のほうを振り返った。
「……へ?」
そう力無い声を漏らし、透子の身体がふらふらと傾く。
様子がおかしい――そう思ったが、理由がわからない。
「……今のっ、《未来の欠片》……!?」
驚愕に満ちた透子の声が、俺の混乱に拍車をかけた。
《未来の欠片》……?
だが、今、俺には何も――。
「おい、どうした……?」
何かに怯えるように、身を縮こませて教室を出ていこうとする透子。
その顔は見たこともないほど蒼白で、明らかに尋常ではないことが起きていた。
俺は慌てて彼女の腕を掴む――その肌は粟立ち、まるで凍えているように、小刻みに震えていた。
「きゃっ……!?」
ぎゅっと身を固くし、短い悲鳴を上げ、かと思うと、
「――ダメっ!!」
透子は俺の手を振りほどいて、逃げるように走り出した。
「透子ッ!? おい、どうした……! 何を見た!?」
悪夢の中で怪物に追われるように、透子は足をもつれさせながら外へ飛び出す。
そうして昇降口を出ると、彼女は絶望したような悲痛な声を上げた。
「ああ、そんな……っ!?」
強い西日が鋭角に射し、濃い影が伸びるグラウンド。
練習に精を出す野球部員の声や、硬球を打つ金属音が、こだまのように繰り返される。
先程までと何も変わらないその光景を前に、透子はどうしてか立ち竦んでいた。
「透子……っ!」
俺はようやく透子に追いつき、呆然と佇む彼女の肩に手を置いて、振り向かせた。
その大きな瞳が俺を捉える。
しかし、一向に焦点が定まらない。
何が起きている――?
透子には何が『見えている』?
聞きたいことが次々に浮かぶが、俺は寸前で飲みこんだ。
荒い呼吸を繰り返す透子は、とても話ができる状態ではなかった。
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