106:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/15(月) 09:19:59.28 ID:SWPDcXJr0
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透子に連絡を取り、会う約束を取りつけたのは、夕方になってからだった。
透子の家に着く頃には、完全に日が暮れていた。
工房の前までやってくると、透子が俺に気づき、ガラス張りの戸を開けようとして――寸前で手が止まる。
「……仕方ないよな」
覚悟はしていたが、こうして明確に距離ができると、落胆を隠すのは難しい。
だが、気を落とすわけにはいかない。俺は短く息を吸い込んで、拳を握った。
「そのままで聞いてくれ。あの美術室に行きたいんだ」
俺がそう言うと、透子は表情を強張らせたまま、俯いてしまう。
「……また、何を見るかわからないよ」
消極的な透子――だが、それでは何も変わらないままだ。
「この間の美術室で何を見たか、話せるようになった?」
「それは……」
よほど怖いものを見たのだろう、透子の口は重かった。
普段はあんなにお喋りで、あからさまで、天然気味な失言をすることさえあるのに。
本当に大事なことに限って、胸の内にしまいこんでしまう。
もどかしい……と、俺は気が逸る。
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