121:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/15(月) 11:02:57.73 ID:SWPDcXJr0
「……駆くんが……」
俺?
「駆くんが、その中で……私に――っ」
「……なに?」
「えっと………………」
そう、下を向いたまま、
「……キス、を……」
震える唇で、透子は囁いた。
「駆くんがっ、私に、キスするの……っ!!」
困惑に絶句する俺をよそに、透子は身を守るように胸に手を当てて、押し隠していた不安や恐怖をさらけ出した。
「私……おかしいのかもっ! だって、その前も見たの! あの時で二回目……!!」
透子は瞳を潤ませ、顔を真っ赤にして俺に迫ってくる。
「私ってなに!? だってそうでしょ? 駆くんはこないだ、私たちが見てるものって、もしかしたら未来じゃないかもしれないって――――じゃあ、なに!? 私が見えるものってなに? それとも……っ」
火照っていた透子の頬が、一転して、凍えるように白くなっていく。
あまりに急な変化に、全て理解したわけではないが、それでも、わかったことがある。
「……そんなときが……来るの……?」
透子は怯えている。
さっき、透子自身がおまじないのように口にしていた――透子は今、怖いのだ。
たぶん、俺との関係が進むことが。
関係が進み、変化していくだろう未来を前にして、立ち竦んでいる。
『落ちる俺』も『襲いくる鳶の群れ』も『雪』も『俺との口付け』も、そんな透子の怖れや気後れ、躊躇い、心細さ――そういったものが形作った幻影なのかもしれない。
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