141:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:39:01.60 ID:OU1b3DXA0
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いつもの高台の林の中に分け入って、俺たちは海と街が一望できる場所を見つけ、そこに腰を落ち着けた。
そこで透子は、ぽつぽつと自分のことを話し始めた。
「私、ガラス職人の父の影響で、小さい頃からずっと、きらきら光るものを見てきたの」
きらきら光るもの――透子にとっての《欠片》。
「あれがなんなのか、またわからなくなっちゃったけど、見始めたのはいつ頃からだろう……」
言いながら、透子は俺の左手に巻かれた蜻蛉玉に目を留めた。
「それ、ちょっと貸して」
「ああ」
透子は、そうすることに何か特別な意味があるように、自分のと俺の、二つの蜻蛉玉を並べて、そのガラス越しに街を眺めた。
「……これから実験が始まるんだね。何かがわかるといいね」
「ああ」
俺にとっての、母さんの弾くピアノの調べは、透子にとっての、透子の父親の作るガラスの煌めきと、同種のもの。
小さな頃から馴れ親しみ、強い影響を受けてきた、自身の核心にあるもの。
それを二人で共有することで、何か特別なことが起きるのではないか。
あるいは、俺たちの《欠片》がなんなのか、判明するのではないか。
もっと互いのことを分かり合えるのではないか。
そんな予感めいたものがあって、俺は透子を家に招いた、けれど……。
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