142:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:42:08.70 ID:OU1b3DXA0
「でも、そうじゃなくてもいいのかもしれない」
「え?」
「透子の家族と俺の家族が、一緒に母さんのピアノを聴くって、そんなこと思いもしなかったけど、それだけでも十分なんじゃないかって」
ここへ来てあと一歩が踏み出せないのは、母さんの提案をまだ透子に話せていないからだろう。
俺がこの街からいなくなるかもしれないこと。
もしそうなるのなら、《欠片》のことや、互いのことを、分かり合ってどうなるというのだろう。
離ればなれになってしまうなら、もっと純粋に、一夏の稀有な思い出として、今日という日を安らかに楽しく過ごせれば、それでいいんじゃないだろうか。
「それって、駆くん――」
俺の決心が鈍るのを感じ取ったのだろう、透子が不安げな声を出す。
透子に出会えたことには感謝している。
今の時点でも、俺にとって透子は十分、特別な存在だ。
この上、分かり合いたいなんて、そんな風に求め合って――その先は?
「……怖がってるんだと思う……」
最後に別れが待っているのなら、これ以上踏み込まないほうがいいんじゃないか?
仮に別れないで一緒にいることを選んだって、《唐突な当たり前の孤独》は変わらず付き纏うだろうし、うまくいく保証もない。
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